この記事は「「愚民」でいいから幸せが欲しいニャア」「「規約」をめぐる二元論とその相対化」「責任って何かね」「責任と自由―3.他者と無関心」を素材として加筆・修正を施したものです。 道徳的責任の性質 人の道徳的責任を問う、という行為は、本来的に不安定性を伴う。道徳的責任がどのような場合に発生し、どのような場合に果たされたことになるのかについての判断は、社会ごと、個人ごとに異なる。これに対して、法的責任の場合は、その発生は法が確定するものであり、法的行為によってそれを果たしたことになるので、比較的明瞭である。そのため、規範的議論においてその所在、内容、範囲などについて問題となるのは、主に道徳的責任の方である。 一般的に、道徳的責任の所在、内容、範囲は、当該社会内における支配的な道徳的感覚に基づいて定まる。通常、AがBに対して、Bが事象Cについての責任を負っていることを認めさせるためには、論理や