65 「たたり」1と宗教ブーム ―変容する宗教の中の水子供養− 松浦 1.はじめに 中絶した胎児に対する死者供養である水子供養は、1970 年代に成立し 80 年 代にかけて全国化した極めて新しい現象であり、 それが宗教なのか商売なのか、 仏教のものであるのか否か、日本の伝統宗教と関係あるのかないのか、中絶し た女性に対する癒しなのか恫喝なのか、あるいは中絶問題の解決になり得るの か否か、といった多彩な視点から国内外の研究者たちの注目を集めてきた。 仏教学者ウィリアム・R・ラフルーアは、水子供養を完全に仏教の宇宙観の 中に位置づけており、水子に対する考え方は日本に伝統的に存在してきたもの で、1970 年代以降にメディアの注目を集めるようになったに過ぎないという立 場をとっている。ラフルーアによれば、水子供養は中絶に対する女性の罪悪感 を癒し、また社会的には中絶が権利問題としてアメリカ