「ブオーン」というディーゼルエンジンの音が床下から響き、列車は峠を登っていく。かつての伊勢と紀州を分ける峠で、紀州側に下り始めると漁港に係留された漁船が見えてくる。 名古屋から南に向かう紀勢本線に揺られていると、絵に描いたような日本の「田舎」の風景が目に飛び込んでくる。伊勢平野では稲刈りが真っ最中の漁業、リアス式海岸の紀州に入ると漁業と林業が盛んだ。盛んだというのは出身者の見栄であり、都会出身者にとっては「過疎」にしか思えないかもしれない。 東京から田舎に帰ると、過疎化する田舎をどうにかしたい気持ちと、どうにもならない諦めの気持ちが心の中で混じり合い、どちらの気持ちも押し殺してしまう。この夏にそのような思いをした人も多いのではないだろうか。 インターネットが登場したことで、ビジネスや共同作業において距離は問題でなくなった。どのような田舎であってもネットワークにつながっていれば、仕事はできる