まんがを描く、彫刻を作る、演劇の脚本を書く、バンドで演奏する楽曲を作る──あらゆる表現行為においてもっともむずかしいのは、しだいに「自分がいったい何をやっているのかよくわからなくなってくる」ことに尽きるのではないだろうか? 作業の手を止めて、表現者はふと考える。このまんがのどこがおもしろいのか。こんな彫刻を作って、実際に見る人はいるのか。このように恥ずかしい脚本を書いて笑われはしないだろうか。私が作っているこの曲は、実はとてつもなくカッコ悪いのではないか……。こうした疑念や不安、無力感はあっという間に表現者に忍び寄り、大いなる意欲と表現衝動につき動かされて開始したはずの創作は、いともかんたんに挫折してしまう。 なんらかの表現をほんの少しでも経験したことがあれば、創作につきまとうこうした不安は理解可能なのではないだろうか。まわりの人はもっとスマートにうまくできている、こんなおかしなやり方をし