【講師】 ジャン=ポール・ドムール(パリ第一大学、フランス国立事前考古学研究所元所長) 坂井秀弥(奈良大学文学部文化財学科) 【ディスカッサント】 稲田孝司(岡山大学) 【司会】 ロラン・ネスプルス(日仏会館・フランス国立日本研究センター) 【要旨】(ドムール) フランスは、事前考古学という政策分野では、かなり後発の国だといえる。そもそもフランスは、歴史上、長期にわたって中央集権によって統一され、さらに19世紀まではその言語がヨーロッパの知的空間の共通語だったこともあり、国民国家的なアイデンティティの形成において、考古学はあまり重要な役割を果たしてこなかった。実際、ルーブル美術館に収められている考古学的な展示物のうち、フランス国内から発掘されたものは皆無なのである。さらに1950年代、60年代には、非常に多くの考古学的な価値を持つ遺跡が復元不可能なほどまでに壊されてしまった。こうした状況が