CIA捜査官エドワード・ハンターは、朝鮮戦争で中国軍の捕虜となった兵士の一部に奇妙な現象が起きていることに気がついた。ごくふつうのアメリカ青年だった彼らは、いまや毛沢東を賛美し、母国を非難する共産主義者に転向していたからだ。ハンターは、中国の捕虜収容所で兵士の思想の人為的な改造が行なわれていると考え、これを〝Brainwashing〟と名づけた。中国語の「洗脳」の直訳である。 米軍の研究者たちは、中国軍の行なった洗脳の技術を解明しようとさまざまな実験を行ない、それを分離・移行・統合の3つのプロセスにまとめた。 分離とは、相手を日常生活から完全に隔離すること。捕虜収容所や軍隊の新兵訓練所、オウム真理教のサティアンなどがこれにあたる。捕虜は名前を奪われて番号やホーリーネームで呼ばれ、私物はすべて取り上げられ、現実世界との交流を絶たれ、逃げ出す術がないことを思い知らされる。 移行では、自意識や自