はじめに 生き物の体を支える脚は、その生態に応じて実に多彩な形をしています。生物は専門ではありませんが、象の脚、ネズミの脚、こうもりの脚、バッタの脚、海中生活に対応して外見から見えなくなってしまったクジラの脚まで、それぞれが自身の生活環境に非常にうまく適応した形と仕組みを持っているように思います。同様に探査機の脚である着陸機構も、そのミッションライフが仕組みと形に強く反映されます。今回は1本の主脚と4本の補助脚という一風変わった外観に落ち着いたSLIMの着陸機構ついて、その概要を簡単に紹介します。 改めて「SLIM」とは、Smart Lander for Investigating Moonの略で、JAXA宇宙科学研究所にて進められている月着陸実証機の開発プロジェクトとその機体の名前を指します。SLIMプロジェクトの主な目的は、高精度な着陸技術(ピンポイント着陸)の実証と、低リソースの小型