単身赴任で夫が家を出た時、息子は大学合格が決まった入学前だった。 そのころは「親父キモイ」といいながらも毎年二人で、春の劇場版コナンを観に行くのが恒例となっていた。 小学生の頃からコナンが大好きになり、全巻自分のお小遣いで買い揃え、自分でも漫画を書き、アニメは毎週録画し、映画があると父さんと二人で観に行ってパンフレットとポップコーンを買ってもらう。 反抗期になっても、コナン映画だけはついていく。 何しろ、チケットも、パンフレットもグッズもお金を出してもらえる。 夫は夫で、映画は観ずにすぐ寝るくせに、愛する息子とのコミュニケーケーションが嬉しくて毎年楽しみにしていた。 高校三年までのその甘い思い出を、夫は当然今もそうであろうと今年も息子にラブコールする。 しかし、浦島太郎じゃないけれど、息子はこの2年の間に当たり前ではあるが成人し、バイトで収入も得るようになっている。 「おい、コナン、行くか