豪華クルーズ船で起きたパンデミック、混乱する政府の対策、逼迫(ひっぱく)する医療機関で迫られる命の選別……。医療ミステリー小説「チーム・バチスタの栄光」などのシリーズの舞台、「桜宮市」にも新型コロナウイルスがやってきた。7月に小説「コロナ黙示録」を出した医学博士で作家の海堂尊さんに、コロナがあぶり出した日本の病巣を聞いた。【上東麻子/統合デジタル取材センター】 「バチスタ」シリーズは現実世界のパラレルワールド ――桜宮市にもコロナがやってきて、おなじみのバチスタシリーズの面々が奮闘しています。なぜ題材に取り上げたのですか? ◆実は、あのシリーズはもう書くつもりなかったんです。僕にとって登場人物たちは、あの世界で日常を送っていて、たまに電話する親戚みたいな存在です。つまり、桜宮は現実世界のパラレルワールド。だから、コロナが来ていないと整合性がない。ちょうど緊急事態宣言下で、政府の対応に違和感