【シンガポール=青木伸行】南シナ海の南沙諸島(英語名・スプラトリー)の領有権をめぐり、鋭く対立する中国とフィリピンが、総額600億ドル(4兆6千億円)の経済協力で合意した。「経済カード」を使い、東南アジア諸国連合(ASEAN)を懐柔する中国の戦略を、改めて浮き彫りにするものだ。ASEAN側は、中国に「政経分離」で臨んでいるが、取り込まれる危険性と隣り合わせだといえる。 600億ドルの経済協力は8月31日、訪中しているアキノ大統領と胡錦濤国家主席との間で合意された。今後5年間で貿易を倍増し、直接投資を15億ドルにまで拡大することが柱だ。 フィリピンにとり、中国は3番目の貿易相手国。昨年の貿易総額は、前年比35・1%増の277億ドルにのぼった。フィリピンの4~6月期実質GDP(国内総生産)の伸び率は、建設投資の大幅減と輸出の減少が響き鈍化した。こうした経済情勢下で、中国との貿易、直接投資の拡大