「死にたいと思う人が死を選ぶ、それのどこが悪いのか」。尊厳死に賛成する人たちの多くが口にすることは、だいたいこんなところだ。しかし、これほど簡単明瞭な話だとも思えないので、賛成の人たちにいつもいろんな質問をするのだが、そうやって聞いて回って感じたことは、賛成派はむしろ考えるべき論点を(知ってか知らずか)*1スキップしているということだ。先日のシンポジウムでも、「なるほど、それなら納得できるね」なんて話にはならなかった。この人たち(=尊厳死協会の人たち)の言うことは(やっぱり)危うく、とてもじゃないが乗れない。 「死にたいと思う人が死を選ぶ」、この物語に付随するのは次のような実感だ。──「あんな風になるくらいなら、いっそ死んだ方がマシだ」。こういうことが、割と簡単に口にされてしまうような世界に僕らは生きている。「あんな風」には、いろんな状況が代入されるだろう。たとえば、人工透析を導入するかど