二一世紀に入ってスウェーデンから送り出されたスティーグ・ラーソンの『ミレニアム』三部作は、今世紀初頭を飾る力作であり、これまでのミステリ、ハードボイルド、警察小説、スパイ小説、サイコサスペンスなどの物語ファクターの最良のエキスを集約したシリーズと見なすことができるだろう。三部作のタイトルを示す。早川書房からヘレンハルメ美穂・岩澤雅利・山田美明訳で、『ドラゴン・タトゥーの女』 『火と戯れる女』 『眠れる女と狂卓の騎士』 として刊行されている。 かつて埴谷雄高だったと思うが、ヨーロッパで誕生した近代小説は時計回りにロシアに移り、日本を飛びこえ、北アメリカを経て南アメリカへ伝わり、一応の完成を見たという意見をもらしたことがあった。それをもじれば、北アメリカで誕生したしミステリは逆回りで日本やイギリスを経て、スウェーデンで完成したという称賛を、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』三部作に与えたくな