霞みのような粉雪が舞う場所で、小さな子供が、軽やかに歌う。 「なんにもないのは黒か、白か」 まっ黒なコートを着た子供だ。 「ぜんぶ消すのは黒か、白か」 細い鎖が、柔らかな首筋に引っ掛かっている。 「なんにもなくて、ぜんぶ消えて、最後に残った色はなに?」 小さな子供が首を傾げる。鎖の先っぽについた鉛色の弾丸が、ふらふらと揺れる。 「ぜんぶ消えて、残るのはなに?」 何もかもが消えてゆく場所で、何もかもが消えるまで。 歌声に合わせて、粉雪と弾丸が、同じ音を立てて揺れる。 1 灰色の朝日が差し込むベッドの中で、少年は考える。 どうしようもない事実として、〈青い野原の集落〉は終わりつつある。 ここには未来なんてない。そんなことみんな知っている。 誰か偉い人が、早く看板を立てるべきなのだ。〈青い野原の集落〉は終了しました、と大きな字で書いて。そうすればこの集落の人たちだって、雪原へと足を踏み出すかもし