あなたは何を元に善悪の判断を下しているのであろうか。信条を直感的に参照している人が多いと思うが、その信条が適切なものか考えたことの無い人は多いであろう。左派やリベラルを自認する人々には、特にそういう人々が多いように思う。 「直感的な価値規範の問題なので論理的議論は難しい」と開き直る人もいるのだが、中心となる倫理から、具体的な行為における規範を説明するぐらいはして欲しい所だ。実際に、倫理学者の間では有名な功利主義者のピーター・シンガーの名著『実践の倫理』を読んでみると、ある程度は論理的に説明されることが分かる。 本書は教科書的ではなく、90年代(そして今でも)話題になる倫理的なトピックを取り上げたものだ。前半と後半で議論の流れが違うのだが、前半の選好功利主義の立場から、いかにも論争を呼びそうな畜産、中絶、嬰児殺し、安楽死などが議論されている部分の議論は参考になる。キリスト教の戒律などの他の倫