大学院人文社会系研究科 アジア文化研究専攻 教授 陳 捷 旅する書物を追って中国から日本にやって来た研究者。 「子どもながらに、世の中に大きな変動が起きていることは日々感じていました」 陳の小学生時代は、中国を吹き荒れた文化大革命の後半に当たっていた。 学校の授業では孔子の言葉を批判することもあった。その時々の政治情勢次第で、子どもの本に出てくるような歴史上の人物の評価すらころころ変わった。 陳が古文献学に惹かれたのはそのためだ。史料研究ならば、誰かの価値観による評価を教わるのではなく、史料を直接見て自分の頭で判断できる。 北京大学に進み、中国古典の研究者となった陳は1994年に日本を訪れた。目的は、中国では失われた中国の古典籍を日本で探すこと。調査を進めるうちに、明治時代に来日した中国人が日本で漢籍を探し集めた時の記録に出会った。 「彼らは日本語が話せないので、日本人と情報交換する際には