『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』はある強い困難に向き合った仕事だ。もちろん新しい物語的展開やエピソードの挿入はある。そのことは旧作を引き継ぎながら超えていこうとする『ヱヴァンゲリヲン』の姿勢を示しているだろう。しかし、そうした努力によって逆にかつての仕事が呼び戻されてしまっている箇所が本作には多くみられる。それどころか、その処理はどうも意図的に行われているようだ。 『ヱヴァンゲリヲン:破』では、基本的に以前の『新世紀エヴァンゲリオン』テレビシリーズ第八話から第拾九話まで*1の内容が一本のフィルムにまとめ直されている。そのためにテレビ版のいくつかの放映回は姿を消しているし(たとえば第拾壱話「静止した闇の中で」や第拾参話「使徒、侵入」)、大きく圧縮されて映画の中に組み込まれた出来事もある(たとえば『破』の第8の使徒は落下中、旧版第拾六話に登場する使徒レリエルに似た形態をごく短時間だけとる)。