佐藤和美 手塚治虫にはアイヌに関係する作品が二つある。『勇者ダン』と『シュマリ』である。以下でこの二作品にでてくるアイヌ語について考察してみたい。 『勇者ダン』ではキムンカムイとシュマリカムイの二体のロボットがでてくるが、花丸博士にキムンは熊、シュマリはキツネの意味だと言わせている。 アイヌ語で「シュマリ」sumariとは「キツネ」という意味である。 「キムン」を手塚治虫は「熊」という意味で使っているが、知里真志保の『分類アイヌ語辞典・動物編』の「熊」の項を見てもキムンという単語はでてこない。でてくるのは「キムンカムイ」kim-un-kamuy(山にいる神)、「カムイ」kamuy(神)などである。アイヌ語には熊をあらわす「キムン」という単語はないと言えるだろう。手塚治虫は「キムン」kim-un(山にいる)が「熊」という意味だと勘違いしていたのではないだろうか。これは『シュマリ』にも引き継が