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ブックマーク / blog.livedoor.jp/route408 (13)

  • 日本発のエボラ治療薬となるか〜アビガンの話 : 有機化学美術館・分館

    10月27 日発のエボラ治療薬となるか〜アビガンの話 カテゴリ:医薬 西アフリカで発生したエボラ出血熱は、一部の国ではすでに鎮圧されつつありますが、いくつかの国では相変わらず猛威を振るっています。最近ではアメリカやヨーロッパにも飛び火し、日も対岸の火事とは言っていられない情勢になってきました。正直、政治家の皆様におかれてはうちわとかSMバーとかは後回しにし、こっちの対策をしっかり打ってくれよと言いたいところではあります。 そのエボラ治療薬として、日の薬が脚光を浴びています。富士フイルムの「アビガン」という薬で、もともとは富山化学が開発していた薬剤です。化合物名は「ファビピラビル」、かつてはT-705というコードネームで呼ばれていました。この薬が、恐るべきエボラウイルスに有効ではないかという結果が出つつあるのです。 抗ウイルス剤は、医薬の中でもいまだに最も難しい領域のひとつです。細菌の

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  • 安息香酸のこと : 有機化学美術館・分館

    5月25 安息香酸のこと 某ミュージシャンの覚醒剤使用騒動に伴い、「アンナカ」という言葉がマスコミに流れるようになりました。アンナカは「安息香酸ナトリウムカフェイン」の略称ですが、単独の化合物名ではありません。興奮剤であるカフェインに、溶解性を上げるための安息香酸ナトリウムを混ぜたもので、これ自体は別に違法なものではありません。処方箋さえあれば販売可能ですが、最近ではあまり使われない医薬品のようです。ただし昭和の時代には、覚醒剤の混ぜ物あるいは代用品として出回ったことがあるとのことです(参考:弁護士小森榮の薬物問題ノート) カフェイン このニュースを見た人から「安息香酸って不思議な名前だけど、なんだろう」という声があったので、ちょっとその話を書いてみます。化学者にとってはおなじみの名前ですが、由来を知っている人は少ないのではないでしょうか。 安息香酸の構造は下図に示す通り、ベンゼン環にカル

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  • ベンゼン環を引きちぎる : 有機化学美術館・分館

    1月18 ベンゼン環を引きちぎる カテゴリ:有機化学 よく「亀の甲」などと呼ばれるベンゼン環の正六角形構造は、有機化学の象徴と呼ぶべきものです。グラファイト、PETなど身近な物質、フラーレンやカーボンナノチューブといった先端炭素材料も、このベンゼン環の安定性を基礎に出来上がっています。一面で、PCBやダイオキシンなど、環境中からなかなか消えてゆかない有害物質の頑丈さも、このベンゼン環の安定性に由来するものです。 PCB(上)とダイオキシン(下)。いずれも一例 ベンゼン環の持つこの安定性は、6つの炭素が持つπ電子が共鳴し、全体に行き渡って(非局在化)いることによります。図の上では単結合と二重結合が描いてありますが、実際には全てのC-C結合は1.5重結合というべき等価なものになり、安定化しています。この効果こそが、有機化合物の世界を格段に幅広く、奥深くしているといっていいでしょう。 ベンゼン

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  • F1ドライバーが頭脳ドーピング? : 有機化学美術館・分館

    8月17 F1ドライバーが頭脳ドーピング? ちょっと気になる記事を見つけたので、そちらの件を。 野球・自転車競技などでドーピングが問題となり、一部選手が出場停止や永久追放などの重い処罰を受けています。そして最近になり、F1ドライバーにもドーピング疑惑がささやかれるようになっています。といっても、筋肉増強剤やエリスロポエチンなどではなく、ちょっと意外なことに記憶力増強の薬が使われているという話が流れているのだそうです(記事)。 F1と記憶力にどれだけ関係があるのかと思ってしまいますが、実は大いにあります。1960年代から70年代にかけて活躍したF1ドライバーであるジャッキー・スチュワートは、生まれつき「失読症」という病気で、文字で書いてあることの意味を読み取ることができません。しかし記憶力はずば抜けていて、たとえばニュルブルクリンクの187ヶ所あるコーナーの、ブレーキ・ギアチェンジ位置を今も

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  • 美白と接着剤とドーパミン : 有機化学美術館・分館

    8月1 美白と接着剤とドーパミン カネボウ化粧品が販売していた美白化粧品が問題になっています。「ロドデノール」という化合物を含む54製品が、使用した際に肌がまだらに白くなるケースがあるとして、全てを回収すると発表しました。同社のウェブサイトによれば、これまで確認された被害者は2250人に上るということです。症例の写真など見るとかなり目立つもので、ちょっと心配になります。 さてそのロドデノールとは何かというと、下図のような比較的シンプルな化合物で、白樺の樹皮などから得られるそうです。偶然なのかどうかはわかりませんが、やはりカネボウが「脂肪を減少させる効果がある」として10年ほど前に売り出した「ラズベリーケトン」とも非常に似通った構造です。 上がロドデノール、下がラズベリーケトン さてロドデノールにどういう効果があるのかというと、肌の色のもとであるメラニン色素の合成を抑えてしまうというものです

    美白と接着剤とドーパミン : 有機化学美術館・分館
  • 死を呼ぶアミノ酸 : 有機化学美術館・分館

    5月21 死を呼ぶアミノ酸 カテゴリ:有機化学毒 一瞬、どこか別のブログに迷い込んだかと思われた方もおられるかと思います。ひとまずブログ開設満7年を期して、白背景に模様替えをしてみました。まあ要するに、書いている筆者の目が悪くなってきたせいで、黒背景が見づらくなってきたというのが最大の理由です。なお老眼ではなく乱視ですので、そこのところはお間違いなく(必死)。 さて今回はまた毒のお話。中国の雲南省ではここ30年ほど、原因不明の突然死が数多く起きており、何度もこの件が報道されていました(ニュース)。 1978年7月、同省麗江市で林業従事者2名が原因不明のまま突然死したことが報じられて以降、同省北部の海抜1800−2600メートル地帯では2008年までの30年間に400人が「謎の死」を遂げた。現地では、死の数時間前から目まいや吐き気のほか、説明できないような「奇怪な症状」が現れるとの噂が流れ、

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  • 猛毒・リシンの横顔 : 有機化学美術館・分館

    4月18 猛毒・リシンの横顔 あちこちからニュースが飛び込んできて、何かと騒がしい昨今です。アメリカではボストンマラソンでの爆発テロという大きな悲劇の後、「リシン」という毒物が上院議員の元に送られたと報道されています。さらにオバマ大統領のところにもリシンらしき物質が送りつけられたとのことで、9・11後に炭疽菌テロの行われた、2001年を思わせる状況となってきました。 さてこのリシンとは、いったいどんな物質でしょうか。これはタンパク性の猛毒で、トウゴマという植物の種子から得られるものです。単離されたのは1888年といいますから、かなり古くから知られていたタンパク質のひとつです。 トウゴマ(ヒマ)の種子 英語では「ricin」という綴りです。日語で表記すると区別がつきませんが、アミノ酸のリシン(リジンとも)は「lysine」ですので、全くの別物です。 リジン(lysine) さてこのリシンは

    猛毒・リシンの横顔 : 有機化学美術館・分館
    mk16
    mk16 2013/04/18
    >何より厄介なことに、リシンには今なお解毒剤が知られていません。微量を撃ち込まれればそれで終わりという、実に恐るべき毒なのです。/圧力鍋爆弾に使われた金属片にこの物質が塗られてたらもっと犠牲者が出てた
  • 印刷会社にて胆管がん発生 : 有機化学美術館・分館

    6月14 印刷会社にて胆管がん発生 化学関係で、ちょっと気になるニュース。大阪の印刷会社で、胆管がんが集中発生しているというものです。 大阪市内の印刷会社の工場で1年以上勤務していた元従業員約40人のうち、少なくとも男性5人が胆管がんを発症し、4人が死亡していたことが、産業医科大の熊谷信二准教授(労働環境学)らの調査で分かった。平均的な日人男性の胆管がんによる死亡率の約600倍と極めて高い値で、作業時に使われていた化学物質が原因と推測されるという。遺族らの申し立てを受け、労働基準監督署も調査を進めている。 熊谷准教授によると、調査したのはこの工場の、印刷前に文字の間違いや印刷の仕上がりをチェックする「校正印刷部門」で平成3〜15年に1年以上働いていた男女42人。発症した5人ががんと診断を受けた当時の年齢は25〜45歳と若く、このうち4人が平成11年ごろから10年ほどの間に相次いで死亡し

    印刷会社にて胆管がん発生 : 有機化学美術館・分館
    mk16
    mk16 2012/06/15
    >今のところ、原因と疑われているのはジクロロメタンと1,2-ジクロロプロパンという塩素系有機溶媒のようです。特に前者は有機合成の研究室では汎用される溶媒であり、事実なら大変なことです。
  • ヘキサメチレンテトラミンとは何か : 有機化学美術館・分館

    5月26 ヘキサメチレンテトラミンとは何か まず少々お知らせ。CASでは、化学関連の注目コンテンツを、動画やポッドキャストなどで配信しています。一部は日語訳もされており、聞きやすい構成になっておりますので、ぜひお訪ねいただければと思います。発音のよい英語ですので、ヒアリングのなかなかよい練習にもなります。 CASメディアライブラリー *    *    *    *    * さて先日来騒ぎになっているホルムアルデヒド汚染の件、ヘキサメチレンテトラミンが流されたものと確定したようですね(ニュース)。廃液にヘキサメチレンテトラミンが入っていることを、委託された業者が知らされていたとかいなかったとかもめているようですが、いずれにせよ何十トンもの廃液を処理するには、認識が甘かったといわれても仕方ないところでしょう。なおホルムアルデヒドの性質については、以前館に書いた記事をご覧ください。 ホル

    ヘキサメチレンテトラミンとは何か : 有機化学美術館・分館
  • 中国語の化合物名 : 有機化学美術館・分館

    7月18 中国語の化合物名 他のあらゆる業界同様、化学の世界も近年中国の進出が目立っています。で、漢字の国であるかれらはどのような化学用語を使っているの。実は筆者も結構な漢字マニアでありますので、調べてみるとなかなか面白かったりします。 中国では元素ひとつひとつに漢字が当てられているのはわりに有名かと思います。周期表だとこんな感じです。 (クリックで拡大。著作権フリー、持ってけドロボーです。) いや、見てると面白いですね。金銀銅や鉛みたいななじみ深い漢字もありますが、水素や窒素、酸素なんかはどうしちゃったのあなたという字に化けています。イットリウムとガドリニウムは間違えそうだなあとか、タリウムとジスプロシウムはどこかで見たことある字だなとか、いろいろ面白い。このような次第で、周期表が1ツイートに丸ごと収まってしまいます。漢字の力を感じますね。 文字の作りとしては、いわゆる形声文字になってい

    中国語の化合物名 : 有機化学美術館・分館
  • ナノチューブを溶かす意外なもの : 有機化学美術館・分館

    8月22 ナノチューブを溶かす意外なもの カテゴリ:有機化学 炭素でできた極細の筒・カーボンナノチューブは、夢の新素材、ナノテクの旗手として各方面の大きな注目を浴びています。化学・材料・物理学・生物など、ここ数年学術誌にナノチューブの文字が載らない日はまず一日もないというほど、各分野で盛んな研究が進められています。 しかしこうした応用研究を阻む大きな要因として、ナノチューブが各種の溶媒に溶けないという点が挙げられます。ナノチューブは互いに引きつけ合ってがっちりと絡み合った束を作る性質があり、これをほぐして溶媒に分散させるのは至難の業なのです。化学の世界において、反応や精製はたいてい溶媒に溶かして行うものですから、何にも溶けないという性質は極めてやっかいなものなのです。 また生物学方面の応用を考えるとき、生命を支える媒質である「水」に溶ける(分散させる)ことはほぼ必須の条件です。しかし炭素で

    ナノチューブを溶かす意外なもの : 有機化学美術館・分館
    mk16
    mk16 2011/02/06
    >研究室にあるあらゆる溶媒を受け付けないナノチューブを溶かしてしまう「魔法の液体」は、実はコンビニで150円も出せば容易に入手できます。その液体の名はなんとサントリーの緑茶「伊右衛門 濃いめ」です。
  • 「ヒ素生物」の衝撃 : 有機化学美術館・分館

    12月4 「ヒ素生物」の衝撃 昨日は、NASAから「宇宙生物学上の発見に関する会見」が行われるということで大いに盛り上がりました。筆者も「ついにどこかで宇宙生命がとっつかまったか」と期待したのですが、実際はカリフォルニアの塩湖で見つかった新種の細菌の話でした。なんだよ期待させやがってと一瞬思ったんですが、よく聞けばやはり凄い話で、この細菌はなんと毒性元素として知られるヒ素を体内に取り込み、DNAに組み込んで生活しているというのです。これはまあ宇宙人発見とはいわないものの、どう見ても世紀の大発見としか言いようがありません。さらにいろいろ聞くにつけ、この細菌は実に「ななななんじゃこりゃ」的な代物であるようです(論文はこちら)。 問題の細菌、GFAJ-1。 GFAJ-1と名付けられたこの細菌(こんなカメラの型番みたいなのではなく、もっと素敵な名前を考えてやってほしいですが)が見つかったのはカリフ

    「ヒ素生物」の衝撃 : 有機化学美術館・分館
  • 雨の匂い : 有機化学美術館・分館

    9月12 雨の匂い 日は筆者の住む関東も久々の雨でした。ということで雨と化学の話でも。 雨が降り出すと、独特の匂いがすることがあります。といっても雨そのものは基的にただの水ですから、匂いは持っていません。また「雨の匂い」も、しばらく降り続くと消えてしまいます。ではあれは何の匂いなのでしょうか? その正体は「ジオスミン」(geosmin、ゲオスミンとも)なのだそうです。「大地」(geo)+「匂い」(smell)から名づけられた化合物です。 ジオスミン 実はこの化合物は、地中に棲んでいる細菌類が作っている化合物で、雨が降ると土中から叩き出されて舞い上がり、あの匂いがするのだそうです。しばらく降るとジオスミンは洗い流され、匂いは消えます。 人間の鼻はこの化合物に対して極めて敏感であり、5ppt空気に含まれているだけでその存在を感じ取れる――のだそうです(Wikipediaより)。5pptとい

    雨の匂い : 有機化学美術館・分館
    mk16
    mk16 2009/09/13
    あの苔臭さの正体はコレだったのか。
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