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ブックマーク / www.aozora.gr.jp (15)

  • 寺田寅彦 電車の混雑について

    満員電車のつり皮にすがって、押され突かれ、もまれ、踏まれるのは、多少でも亀裂(ひび)の入った肉体と、そのために薄弱になっている神経との所有者にとっては、ほとんど堪え難い苛責(かしゃく)である。その影響は単にその場限りでなくて、下車した後の数時間後までも継続する。それで近年難儀な慢性の病気にかかって以来、私は満員電車には乗らない事に、すいた電車にばかり乗る事に決めて、それを実行している。 必ずすいた電車に乗るために採るべき方法はきわめて平凡で簡単である。それはすいた電車の来るまで、気長く待つという方法である。 電車の最も混雑する時間は線路と方向によってだいたい一定しているようである。このような特別な時間だと、いくら待ってもなかなかすいた電車はなさそうに思われるが、そういう時刻でも、気長く待っているうちには、まれに一台ぐらいはかなりに楽なのが回って来るのである。これは不思議なようであるが、実は

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    mkusunok 2022/07/04
    なぜ電車の輻輳が生じるのか、この時代にしては実に鋭い考察だと思うのだけれども、輻輳って単語は出てこないんだよね
  • 坂口安吾 日本文化私観

    僕は日の古代文化に就(つい)て殆んど知識を持っていない。ブルーノ・タウトが絶讃する桂離宮も見たことがなく、玉泉も大雅堂も竹田(ちくでん)も鉄斎も知らないのである。況(いわ)んや、秦蔵六(はたぞうろく)だの竹源斎師など名前すら聞いたことがなく、第一、めったに旅行することがないので、祖国のあの町この村も、風俗も、山河も知らないのだ。タウトによれば日に於ける最も俗悪な都市だという新潟市に僕は生れ、彼の蔑(さげす)み嫌うところの上野から銀座への街、ネオン・サインを僕は愛す。茶の湯の方式など全然知らない代りには、猥(みだ)りに酔い痴(し)れることをのみ知り、孤独の家居にいて、床の間などというものに一顧を与えたこともない。 けれども、そのような僕の生活が、祖国の光輝ある古代文化の伝統を見失ったという理由で、貧困なものだとは考えていない(然し、ほかの理由で、貧困だという内省には悩まされているのだが―

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    mkusunok 2021/03/24
    安吾的美意識では量子計算機より自作ラックサーバーが美しいのか→“不要なる物はすべて除かれ、必要のみが要求する独自の形が出来上っているのである。それは、それ自身に似る外には、他の何物にも似ていない形”
  • 「ケ」のように見える文字の入力について

    「」のように見える文字の入力について ――青空文庫のいわゆる「ケヶ問題」―― 2007年3月19日 作成 2007年4月3日 「区点番号5-17と5-86の使い分け指針」にリンクし、誤字を訂正しました。 2008年3月9日 「増補改訂JIS漢字字典」の、5-86と5-17が記載されているページ画像を組み込み、これに関連する文言を、追記しました。 2012年1月17日 「区点番号5-17と5-86の使い分け指針」のURLの変更を受けて、導入部を改めました。 2012年2月3日 「――青空文庫のいわゆる「ケヶ問題」――」を、副題として加えました。 富田倫生 「」のような形の、二つの文字のテキスト化について、青空文庫は、「区点番号5-17と5-86の使い分け指針」を設けています。 これに変更提案が寄せられ、どう扱うかの議論が長引く中で、「ケヶ問題」という言葉まで生まれました。 ここでは、「方針の

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    mkusunok 2019/02/23
    ヶはカタカナではなく記号やら漢字に準ずるもの(个に由来する文字)とされているのだが、文字コード的には今でもカタカナに分類されているという話。「が」と読む場合はケではなくヶを使った方が良さそうなんだな
  • 坂口安吾 街はふるさと

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    mkusunok 2018/08/11
    青空文庫の中で数少ない占領期の「サンマー・タイム」が出てくる文学作品。当時の国会議事録を見ても「サンマー・タイムの◯時」って表現がよく出てきて、面倒臭そうな印象
  • 中谷宇吉郎 六三制を活かす道

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    mkusunok 2018/08/11
    占領下の夏時間を扱った文学作品を探してるんだけど、青空文庫を検索して夏時間が出てくるのはこれだけ。時期的に日本での苦労話かと思いきや、アメリカでの苦労話か
  • 自叙伝

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    mkusunok 2018/01/02
    私の中でアナーキストというと真っ先に思い出されるのは大杉榮で、彼は日本にダーウィンを紹介した人で、関東大震災のドサクサで憲兵の甘粕正彦大尉に虐殺されたんですよね @__kyrieleison__
  • 坂口安吾 不良少年とキリスト

    もう十日、歯がいたい。右頬に氷をのせ、ズルフォン剤をのんで、ねている。ねていたくないのだが、氷をのせると、ねる以外に仕方がない。ねてを読む。太宰のをあらかた読みかえした。 ズルフォン剤を三箱カラにしたが、痛みがとまらない。是非なく、医者へ行った。一向にハカバカしく行かない。 「ハア、たいへん、よろしい。私の申上げることも、ズルフォン剤をのんで、氷嚢をあてる、それだけです。それが何より、よろしい」 こっちは、それだけでは、よろしくないのである。 「今に、治るだろうと思います」 この若い医者は、完璧な言葉を用いる。今に、治るだろうと思います、か。医学は主観的認識の問題であるか、薬物の客観的効果の問題であるか。ともかく、こっちは、歯が痛いのだよ。 原子バクダンで百万人一瞬にたゝきつぶしたって、たった一人の歯の痛みがとまらなきゃ、なにが文明だい。バカヤロー。 女房がズルフォン剤のガラスビンを縦

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    mkusunok 2017/07/10
    例えばこーゆー随筆がけしからんといわれてしまうと、それは違うだろうと思う訳ですよ。ズルフォンが効かないとか、酒やフツカヨイがどうとか書かれてますけどね(意訳:歯が痛い) @nasakawa
  • 青空文庫 - 梶井基次郎 「桜の樹の下には」

    桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている! これは信じていいことなんだよ。何故(なぜ)って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。 どうして俺が毎晩家へ帰って来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選(よ)りに選ってちっぽけな薄っぺらいもの、安全剃刀の刃なんぞが、千里眼のように思い浮かんで来るのか――おまえはそれがわからないと言ったが――そして俺にもやはりそれがわからないのだが――それもこれもやっぱり同じようなことにちがいない。 いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽(こま)が完全な静止に澄むように、また、音楽の上

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    mkusunok 2014/03/31
    @yokorocks 梶井基次郎『桜の樹の下には』ですね
  • 作業中 作品一覧:ネ

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    mkusunok 2013/01/19
    ほほー『根津権現裏』は青空文庫で校正待ちか。西村賢太の解説も気になるし新潮文庫で買うかな
  • 柳田国男 遠野物語

    [#改ページ] この話はすべて遠野(とおの)の人佐々木鏡石君より聞きたり。昨(さく)明治四十二年の二月ごろより始めて夜分おりおり訪(たず)ね来(き)たりこの話をせられしを筆記せしなり。鏡石君は話上手(はなしじょうず)にはあらざれども誠実なる人なり。自分もまた一字一句をも加減(かげん)せず感じたるままを書きたり。思うに遠野郷(ごう)にはこの類の物語なお数百件あるならん。我々はより多くを聞かんことを切望す。国内の山村にして遠野よりさらに物深き所にはまた無数の山神山人の伝説あるべし。願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。この書のごときは陳勝呉広(ちんしょうごこう)のみ。 昨年八月の末自分は遠野郷に遊びたり。花巻(はなまき)より十余里の路上には町場(まちば)三ヶ所あり。その他はただ青き山と原野なり。人煙の稀少(きしょう)なること北海道石狩(いしかり)の平野よりも甚(はなは)だし。或いは新道なる

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    mkusunok 2013/01/02
    おお!さっそく遠野物語が公開されてるし。吉川英治も待ち遠しい
  • 菊池寛 蘭学事始

    杉田玄白が、新大橋の中邸を出て、石町三丁目の長崎屋源右衛門方へ着いたのは、巳刻(みのこく)を少し回ったばかりだった。 が、顔馴染みの番頭に案内されて、通辞、西善三郎の部屋へ通って見ると、昨日と同じように、良沢はもうとっくに来たと見え、悠然と座り込んでいた。 玄白は、善三郎に挨拶を済すと、良沢の方を振り向きながら、 「お早う! 昨日は、失礼いたし申した」と、挨拶した。 が、良沢は、光沢のいい総髪の頭を軽く下げただけで、その白皙な、鼻の高い、薄菊石(あばた)のある大きい顔をにこりともさせなかった。 玄白は、毎度のことだったが、ちょっと嫌な気がした。 彼は、中津侯の医官である前野良沢の名は、かねてから知っていた。そして、その篤学の評判に対しても、かなり敬意を払っていた。が、親しく会って見ると、不思議にこの人に親しめなかった。 彼は、今までに五、六度も、ここで良沢と一座した。去年カピタンがここの

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    mkusunok 2012/05/19
    @scho_p 漱石の時代には帝大(いまの東大)は英語でしか授業してなくて幕末には辞書も文法書もあったんじゃないかな。教科書がない中で勉強って意味じゃオランダ語だけど杉田玄白の蘭学事始
  • 桐生悠々 関東防空大演習を嗤う

    防空演習は、曾て大阪に於ても、行われたことがあるけれども、一昨九日から行われつつある関東防空大演習は、その名の如く、東京付近一帯に亘る関東の空に於て行われ、これに参加した航空機の数も、非常に多く、実に大規模のものであった。そしてこの演習は、AKを通して、全国に放送されたから、東京市民は固よりのこと、国民は挙げて、若しもこれが実戦であったならば、その損害の甚大にして、しかもその惨状の言語に絶したことを、予想し、痛感したであろう。というよりも、こうした実戦が、将来決してあってはならないこと、またあらしめてはならないことを痛感したであろう。と同時に、私たちは、将来かかる実戦のあり得ないこと、従ってかかる架空的なる演習を行っても、実際には、さほど役立たないだろうことを想像するものである。 将来若し敵機を、帝都の空に迎えて、撃つようなことがあったならば、それこそ人心阻喪の結果、我は或は、敵に対して和

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    mkusunok 2011/07/31
    へー、ちゃんと青空文庫に収録されてたのか
  • 夏目漱石 私の個人主義

    ――大正三年十一月二十五日学習院輔仁会において述―― 私は今日初めてこの学習院というものの中に這入(はい)りました。もっとも以前から学習院は多分この見当だろうぐらいに考えていたには相違(そうい)ありませんが、はっきりとは存じませんでした。中へ這入ったのは無論今日が初めてでございます。 さきほど岡田さんが紹介(しょうかい)かたがたちょっとお話になった通りこの春何か講演をというご注文でありましたが、その当時は何か差支(さしつかえ)があって、――岡田さんの方が当人の私よりよくご記憶(きおく)と見えてあなたがたにご納得のできるようにただいまご説明がありましたが、とにかくひとまずお断りを致(いた)さなければならん事になりました。しかしただお断りを致すのもあまり失礼と存じまして、この次には参りますからという条件をつけ加えておきました。その時念のためこの次はいつごろになりますかと岡田さんに伺(うかが)い

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    mkusunok 2011/03/30
    いつ読んでもいいよね
  • 私の個人主義 (夏目 漱石)

    慶応3年1月5日(新暦2月9日)江戸牛込馬場下横町に生まれる。名は夏目金之助。帝国大学文科大学(東京大学文学部)を卒業後、東京高等師範学校、松山中学、第五高等学校などの教師生活を経て、1900年イギリスに留学する。帰国後、第一高等学校で教鞭をとりながら、1905年処女作「吾輩はである」を発表。1906年「坊っちゃん」「草枕」を発表。1907年教職を辞し、朝日新聞社に入社。そして「虞美人草」「三四郎」などを発表するが、胃病に苦しむようになる。1916年12月9日、「明暗」の連載途中に胃潰瘍で永眠。享年50歳であった。 「夏目漱石」

    私の個人主義 (夏目 漱石)
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    mkusunok 2010/09/10
    漱石の著作は全て著作権が切れてるので『私の個人主義』も含めて概ね青空文庫で読める @sayuritamaki
  • 宮本百合子 花のたより

    シルビア・シドニーが一人二役を見せどころとして主演した「三日姫君」という映画があった。外債募集のためアメリカへやって来た何とかいう世界地図にものっていないような弱小国の麗わしい姫が、ニューヨークへついて間もなくオタフク風にとりつかれてしまったので、その身代りを瓜二つな容姿をもった一人の貧乏で悧※[#「りっしんべん+發」、読みは「はつ」、570-16]な失業女優がつとめて、終りには目出度大新聞の若い社主と結婚するという筋であった。 最近日では、その筋書とは逆な侯爵令嬢の十七日女給ということが、現実の社会で行われた。その侯爵令嬢が、ほかならぬ故東郷元帥の孫娘であったことは、世間の視聴をそばだてしめた。 良子嬢が、浅草のカフェー・ジェーエルで、味噌汁をかけた飯を立ちいしつつも朗らかに附近のあんちゃん連にサービスし人気の焦点にあったという新聞記事をよんで、一般の人々はどんな感想を抱いたであろう

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    mkusunok 2008/01/28
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