パレスチナにおける「心」の傾向 そして、その心理状態は、人間であるパレスチナ人が、やはり人間であるイスラエル人、特にイスラエル兵と対峙する際の特定の形に対応したものとなっている。つまり、心を持たない自然が引き起こす災害による苦しみとは異なり、人間によって傷つけられるという固有の経験をパレスチナ人は積んできたのである。 心理学者のブライアン・K・バーバー(Barber 2008)は、若者が政治的暴力をどのように経験し、それがどのような心の志向性につながるのかを、ボスニアとパレスチナを比較しながら明らかにした。ボスニアについてはサラエヴォで2002年に、パレスチナについてはガザで1998年に行った調査がそのもととなっている。 ボスニアの紛争は、いわゆる民族対立のイメージに近いもので、圧倒的な勢力を持つアクターが存在しないなかで、相互不信の末に殺し合いにまで発展してしまった例である。破壊的な紛争
ポグロムの記憶は続く ロシアを含むヨーロッパでユダヤ人が暴力の対象となったことについては、個々のユダヤ人も、ユダヤ人全体としてもまったく責任がない。内戦期のポグロムは、ボリシェヴィキの赤軍とそれに対抗する白軍、さらにウクライナ民族主義者などが入り乱れるなかで、ユダヤ人がなかば「八つ当たり」される構図のなかで発生した。死者は6万人から20万人と推定されるが、体系的な調査が当時行われなかったため、詳細は不明なところも多い。その後さらにインパクトを持ったホロコーストの陰に隠れ、その責任追及は始まってすらいない。 これに対して、パレスチナにおいて、アラブ人がユダヤ人に暴力に向けた際、個々のユダヤ人にその暴力を向けることは正当化しえないとしても、アラブ人がユダヤ人全体に対して抱いていた不満は、シオニストがパレスチナにユダヤ人の民族的拠点を打ち立てようとし、そこにイギリス帝国が絡んでいるように見えてい
2023年10月に始まったイスラム組織ハマースとイスラエルの衝突は、いよいよイスラエル軍によるガザ地区への地上侵攻という重大な局面に進もうとしている。発端はハマースによる攻撃にあったが、その後のイスラエルはアメリカや国連の言うことにも耳を貸さない強硬な姿勢を見せ続けている。イスラエルはなぜそのような態度を崩さないのか? 『イスラエルの起源』(講談社選書メチエ)の著者・鶴見太郎氏が、現在の情勢に向けて根本から問い直す本格論考をお届けする。 なぜイスラエルは「孤立主義」なのか 拙著『イスラエルの起源』では、イスラエルを作ったユダヤ人の多くの出身地域である旧ロシア帝国に照準を合わせ、イスラエルの軍事主義の歴史的起源を探った。軍事主義の本質の一つは孤立主義である。他者と協調するよりも、一旦他者を遮断して自らの盾を強化し、できるだけ自己完結できるようにする。他者に近づく場合も、その盾を持ちながら、決
Patrick Kingsley, the Jerusalem bureau chief, spoke to diplomats about Israel’s secret push for Egypt to admit hundreds of thousands of Gazans. Israel has quietly tried to build international support in recent weeks for the transfer of several hundred thousand civilians from Gaza to Egypt for the duration of its war in the territory, according to six senior foreign diplomats. Israeli leaders and d
「カフェ プラたく」の店内では持ち込みのプラレールを走らせることもできる。追加料金は特に取らないが、1組の利用は1時間程度(撮影/写真映像部・高野楓菜) 1959年の誕生以来、プラレールはあらゆる世代の心をときめかせている。半世紀を超えて愛される中で「地域や人とのつながり」にも貢献している。AERA 2023年11月6日号より。 【写真】何層にも高く積み上げられたプラレールの立体レイアウト * * * 大人も魅了するプラレールは地域の人々をつなげる役目も果たしている。東京・杉並でご近所付き合いの復活を目的とした活動を行う団体「まっこみゅ」は、JR中央線の高架下にある高円寺空き倉庫で、高円寺プラフェスを定期的に開催している。 代表の桜井俊郎さんがウェブサイト「プラレールの宿」主宰の松岡純正さんのプラレール展示を見て衝撃を受け、これは子どもたちにも楽しんでもらえるに違いないとプラフェスを行
会見を開いたイスラエルのネタニヤフ首相=2023年10月28日、テルアビブのキリヤット軍基地、ロイター ――ガザ地区での戦闘をどう見ていますか。 イスラエル軍は10月25、26両日の夜間、戦車含む部隊が一時的にガザ地区に入って威力偵察を行いました。対戦車ミサイルなどのハマス陣地を確認・破壊しました。北部のイスラエルとの境界から南に広がる耕作地を一望できるガザ市街地のビルの観測所も破壊したようです。 10月27日からは地上侵攻が始まりました。米CNNによれば、衛星写真で確認できていたイスラエル軍集結地の戦車と装甲車計300両の姿が見えなくなりました。ガザに入った模様です。2個旅団程度(数千~1万人程度)の規模です。 CNNは車両のわだちとみられる写真も公開しました。 イスラエル軍は、境界北側からはハマスのトンネル網が比較的少ない海側など2ルートで、地下にハマスの司令部があるとみられるアルシフ
何を討議すべきか 日本が中立的な立場を捨て去ることなく、しかし受け身な姿勢から脱却することによって、劣勢のG7の存在感を高めることにも貢献できる道はないか。 世界の大半の諸国により強くアピールするためには、当たり前のことだけでなく、さらに前に一歩進んだ対応をする努力を見せていきたい。 軍事行動の停止を強く要請することが、イスラエルの自衛権行使の擁護にこだわるアメリカの賛同を得られないとすれば、アメリカも賛同するガザの市民に対する人道支援の充実策に関して、踏み込んで努力する姿勢を見せたい。 現在、日本を含めたG7諸国は、国連などの国際機関を通じたガザへの人道支援に〇〇ドル拠出する云々といった内容の声明を発し続けている。残念だが、これでは効果が乏しい。なぜなら今問題になっているのは、人道支援をガザに入れられないことだからだ。問題から目をそらして、巨額とも言い切れない額面のお金を少しずつ積み上げ
赤ちゃんの遺体を写した画像を、AI判定ソフトが「AI生成」と判定した結果、それがネットやメディアに拡散し――。 イスラエルとイスラム武装組織ハマスの軍事衝突から1カ月。この間、ネットでは生成AIで作られた様々なフェイク画像が飛び交ってきた。 そんな中、イスラエル首相府が10月にXで公開した「赤ちゃんの焼死体」の画像が、米ベンチャーのAI判定ソフトで「AI生成」と判定され、大きな波紋を呼んだ。 騒動を受けて、当の判定ソフトの開発元は、正確性に問題があったと釈明したが、「AI生成」の情報は、その後もネットとメディアを通じて拡散を続けた。 極めてリアルな生成AIフェイク画像が与えるインパクトは、人々が「フェイクに騙される」ことだけではない。 本物に対しても「これは本物か?」との疑念を広げ、事実を「フェイク化」する危険をはらむ。そして、AI判定の難しさが、さらに事態を複雑にする。 真偽の境目が、加
イスラエルと、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘開始から、7日で1カ月。連日にわたる空爆と地上攻撃で、ガザの犠牲者は急増の一途をたどる。イスラエルは、どのような見通しを持って戦っているのか。 「イスラエルは、作戦に全力を投入し続けている。人質の解放を伴わない、戦闘の一時停止は拒否する」 イスラエルのネタニヤフ首相は3日、テレビでの演説で、イスラエルを訪問した米国のブリンケン国務長官が提案した「人道目的の戦闘の中断」を突っぱねた。 ハマスが奇襲攻撃を仕掛けた当初、欧米諸国はいち早くイスラエル支持を打ち出した。だが、ガザでの民間人の犠牲が未曽有の規模に増え、国際的な反発の声が日に日に強まっている。 ガザの死者数は約1万人に上る。この数字は、イスラエルとハマスが2008年以降、4回繰り返してきた大規模衝突による合計の死者数約4千人を大幅に上回る。 事実上の同盟国とし
ガザ地区からイスラエルに向けて発射されるロケット弾/Abed Rahim Khatib/Anadolu/Getty Images (CNN) イスラエル国防軍(IDF)は、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが病院や子どもの遊び場といった民間のインフラを盾にしてイスラエルを攻撃しているとする証拠を公開した。イスラエルのこうした主張について、パレスチナ側は否定している。 イスラエル軍のハガリ報道官は5日、記者会見で、ガザ北部のインドネシア病院などがロケット弾攻撃へのイスラエルの反撃に対する盾としてハマスに利用されていると述べた。 ハガリ氏は、インドネシア病院の空中写真を提示し、近くにロケット発射装置があると指摘した。ハガリ氏によれば、病院からわずか75メートルから80メートルの場所にロケット発射装置があり、そこからハマスが攻撃を行っているという。 イスラエル軍は、ガザ地区
画像説明, ハマスが運営する保健当局は、ジャバリア難民キャンプで1日に起きたイスラエル軍の空爆で数十人が死亡したとしている。画像は、倒壊した建物の下敷きになっている生存者を探す人々と、頭を抱えて座り込む男性 イスラム組織ハマスが10月7日にイスラエルを奇襲攻撃して以来、大量の記事や分析やコメントがあふれ出している。しかし、この事態の全容を知る人は誰もいないのだと、まずはその点を理解しておく必要がある。戦争の霧を突破して、戦場で何が起きているのか把握するのは、いつもと同じように困難だ。そしてそれに加えて、イスラエルとパレスチナの紛争の新しい形が、まだ浮き彫りになっていない。 事態は今も猛スピードで動き続けている。この戦争が拡大するかもしれないという懸念は、依然として現実味のあることだ。中東での新しい現実はどこかにあるのだが、その形と仕組みがどうなるのかは、今のこの戦争が今年いっぱい、そしてお
イスラエルの極右政党所属の閣僚が5日のラジオ番組で、ガザ地区への核使用について「可能性の一つだ」と肯定する発言をし、国内外で批判を浴びている。ネタニヤフ首相は政府の公式見解でないとの声明を出した上で、この閣僚を当分の間、閣僚会議に出席させない処置を取った。イスラエルメディアなどが報じた。 報道によると、核使用を肯定する発言をしたのはエルサレム問題・遺産相のエリヤフ氏。エリヤフ氏はガザへの人道支援物資の搬入に反対し、パレスチナ市民は「アイルランドか砂漠にでも行けばいい」とも発言した。ただ、エリヤフ氏は一連の戦闘に関わる政策決定には関与していないという。 ネタニヤフ首相は声明で、エリヤフ氏の核使用に関する発言は「現実からかけ離れている」と述べ、「イスラエル軍は国際法の高い基準に従って無実の人々に被害を与えないようにしている」と主張した。 ロイター通信によると、これに対しハマスの報道官は「(閣僚
第1次世界大戦勃発の引き金となったオーストリアのフランツ・フェルデナント大公暗殺事件(写真は暗殺数時間前の大公夫妻を乗せた車、写真:TopFoto/アフロ) 1914年6月にサラエボで起きたオーストリア大公の暗殺は一体なぜ、ものの数週間で欧州のすべての大国、やがては米国を巻き込む紛争に発展したのか。 この疑問が特に悩ましいのは、関係国の多くの指導者が懸命に全面的な欧州戦争を避けようとしたからだ。 ドイツとロシアの皇帝は幾多のメッセージを交わし、紛争に発展した1カ月間の危機を鎮静化しようとした。だが、努力は無駄に終わった。 意図せぬエスカレーションの危険 これと似た意図せぬエスカレーションの危険が今、中東地域に忍び寄っている。 ガザ紛争の恐怖があまりに鮮烈なため、あの地区の戦闘だけに集中したい気持ちになる。 だが、西側の政策立案者は次第に地域全体に目を向け、イランと米国、さらにはサウジアラビ
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(CNN) イスラエル諜報(ちょうほう)省がパレスチナ自治区ガザ地区の住民数百万人規模のエジプト・シナイ半島への移送を提案した文書をまとめ、その後にこの文書が外部へ流出していたことが4日までにわかった。 ただ、ネタニヤフ同国首相は、文書の性格などを重く受け止めておらず、軽視する考えを示した。 イスラエル首相府は声明で、文書は予備的な調査の色合いが強く、「政治や安全保障レベルでよく準備される多数の文書のようなもの」と説明。 「次の日」に備えた事後策はイスラエル政府の公式回路では取り上げられていない議題になっていると指摘。「現在は(ガザ地区を実効支配するイスラム組織の)ハマスの統治や軍事能力を解体させることに注力している」とした。 諜報省の文書は先月13日付で、その後、イスラエルのサイト「シチャ・メコミット」に漏出してもいた。
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