重大な病気にかかると、その原因を知りたいと思うのは自然なことだ。しかし、内科医の名取宏さんは「病気の原因は単純ではなく、明確にはわからないケースがほとんど。それなのに原因があると思い込むと、病気になったのは努力不足だという『自己責任論』に陥る恐れがある」という――。 病気の原因を特定したい気持ち 「何が原因だったのですか? 食事が悪かったのでしょうか」 これは私が「進行膵がん」を告知した患者さんから投げかけられた質問です。一般的に膵がんのリスク因子は、糖尿病、アルコール摂取、喫煙、肥満といったところですが、この患者さんはひとつも当てはまりませんでした。つまり、膵がんになった原因はわからないとしかいいようがありません。 がんのように重い病気にかかったとき、患者さんが原因を知りたいと思うのは自然なことです。ところが、必ずしも原因がわかるとは限りません。というか、原因が明確であることのほうがまれ
