<原子力資料情報室通信 No.381 号 2006 年 3 月> 1 チェルノブイリからの放射能汚染によりスウェーデンでガンが増えている? 京都大学原子炉実験所 今中哲二 チェルノブイリ・フォーラム 昨年9月、IAEA や WHO など国連8機関と ウクライナ、ベラルーシ、ロシア各政府の専門 家で構成されている「チェルノブイリ・フォー ラム」が、事故から 20 年を総括する国際会議 をウィーンで開催した(1)。その記者会見の内容 を日本の新聞各紙は、 「チェルノブイリ原発事 故による総死者 4000 人」という見出しで報道 した。それをみて私は一瞬、 「これまで事故で 亡くなった人が 4000 人」という話かと思った が、記事を読むと、 「これからガンでなくなる 人を含め、 事故で死亡する人が全部で 4000 人」 ということであった。各紙は、 「従来言われて いた数字に比べて大幅に下回っ
- 73 - 北スウェーデン地域でのガン発生率増加はチェルノブイリ事故が原因か? マーチン・トンデル (リンショーピン大学病院、スウェーデン) はじめに ヨーロッパでのチェルノブイリ事故影響への関心はまず、子どものガン、とりわけ被曝後の潜伏 期間が短い白血病に向けられた。旧ソ連の領域外においていくつかの調査が実施されたが、いずれ もチェルノブイリからの汚染との関係は示されなかった。しかし、母親の妊娠中に胎内被曝をうけ た子供たちでは、ギリシャ、ドイツ、ウクライナにおいて白血病リスクの増加が報告されている。 ただし、ベラルーシからは報告されていない。最近ウクライナから、チェルノブイリによる被曝に よって大人の白血病が増加したと報告されている。一方、ベラルーシ、ウクライナおよびロシア西 部では、事故と関係して子どもの甲状腺ガン発生率が劇的に増加している。ヨーロッパの他の地域 では、大人の甲状腺
Terrestrial radiation and cancer mortality in Japan Imanaka T. September 7, 2010 Terrestrial radionuclides Geochemical map of Japan, AIST HP 2 Natural radiation: terrestrial origin Geochemical map of Japan, AIST HP Gamma-ray radiation rate at 1 m above ground: D(Gy/h)=5.4U(ppm)+2.7Th(ppm)+13.0K(%) HASL-258(1972) Example:Hiroshima U:2.4ppm、Th:14.3ppm、K:2.4% 13 Gy/h (U) + 39 Gy/h (Th) + 30 Gy
3 チェルノブイリに関する政府レベルの活動 政府の基本的政策 チェルノブイリ原発事故の影響を軽減するためにベラルーシ政府が行なってきた活動は,ソ連の崩壊前と後という2つの時期にまたがる5つの段階に分けることができよう.ソ連時代のベラルーシ政府は,事故の最初のショックから回復すると,ソ連共産党中央委員会とソ連政府が決定した政策を実行した.ソ連が崩壊し,旧ソ連諸国(主としてロシア)からの援助が期待できなくなると,ベラルーシ政府はチェルノブイリ問題について独自の政策を実行することになった. 第1段階(1986年4~6月)では,さまざまな不整合はあったものの,共和国の社会的・経済的状況は,種々の施策を実施することが可能な状態であった.この段階でのもっとも大きな誤りは,放射能の危険について人々に知らせなかったことである.パニックが起きる,という意見は根拠のないものであった.事故の大きさに関する秘密主
1 2 Preston Radiation Research 2003 3 Preston Radiation Research 2003 Pierce Radiation Research 2000 4 Preston Radiation Research 2003 Preston Radiation Research 2003 5 Preston Radiation Research 2003 6 LSS Preston Radiation Research 2003 0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 8 0 0 1 0 0 0 1 2 0 0 1 9 8 6 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 9 0 1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0
1 2011 年 4 月 4 日 3 月 28 日と 29 日にかけて飯舘村周辺において実施した放射線サーベイ活動の暫定報告 飯舘村周辺放射能汚染調査チーム 今中哲二(代表) 京都大学原子炉実験所 遠藤暁 広島大学大学院工学研究院 静間清 広島大学大学院工学研究院 菅井益郎 国学院大学 小澤祥司 日本大学生物資源科学部 3 月 11 日に発生した福島第1原発における事故に関連し、原発サイトから北西方向 25km~ 45km に位置する飯舘村において、福島県内の他地域に比べて汚染の大きい、ホットスポットと 推定される放射能汚染の生じていることが認められた(添付1) 。当該地域に住民が居住中である という事態の緊急性に鑑み、ホットスポットの広がりの概略を把握するため、3 月 28 日と 29 日 の両日、飯舘村当局の協力を得て放射線サーベイ活動を実施した。 ◇サーベイ参加者 今中哲二 京都大学
1 Sv 2.4mSv mSv 10mSv 3.2 X Berrington (1) 15 X X 3.2 7587 700 0.6 Berrington ICRP 1990 (2) Sv 0.05 UNSCEAR 2000 (3) 1.2mSv 3000 5 10-2 /Sv 1.2 10-3 Sv/ 1.3 108 7.8 103 7800 Berrington X X 8000 Berrington Yahoo Japan 448 Berrington Berrington 2 Berrington UNSCEAR2000 NLT UNSCEAR ICRP NLT X UNSCEAR2000 I “Epidemiological evaluation of radiation-induced cancer” 1947 ABCC 1950 ABCC 12 LSS: Life Span
- 77 - チェルノブイリ事故による死者の数 今中哲二 2006 年の春は事故から 20 年ということで、テレビ、新聞などでチェルノブイリのことが大きく取 り扱われた。チェルノブイリ問題に長らくかかわってきた専門家ということなのか、私のところには 前の年の暮れ頃から多くのマスコミ関係者が取材にやってきた。彼らからまず聞かれたのは、 「今中 さん、チェルノブイリ事故では結局何人ぐらい死んだんでしょうか?死者 4000 人というチェルノブ イリ・フォーラムの報告をどう思われますか?」ということだった。 この20年間チェルノブイリのことを調べてきて私は、 (原発事故)→(放射能汚染)→(被曝影 響)という単純な図式でチェルノブイリという厄災の全体はとらえられないこと、科学的アプローチ で解明できることはその厄災の一部でしかない、 ということを肝に銘じるようになった。 それで、 「チ ェルノブイ
福島原子力発電所の事故に伴う放射線の人体影響に関する質問窓口 (Q&A)開設について 私達は、放射線の生物影響を研究する大学等の研究者の有志が集まった日本放射線影響学会会員の有志グループです。東北関東大地震を被災され、様々な苦難を強いられておられる皆様に心からお見舞い申し上げます。 私もこの未曾有の大地震を映像で見て言葉を失ってしまいましたが、この大地震を切掛けに起きた東京電力福島第一原子力発電所で起きている原子炉事故に伴う放射線および放射性物質の放出によって地元の方々ばかりか多くの国民が見えないものに対するどうしようもない不安を感じておられると思います。私達は、事故の素早い収束を願っています。しかし、TV報道などを通じ、一般の皆様が日頃なじみのない放射線の健康影響について計り知れない多くの不安を抱えておられることを目の当たりにして、放射線の生物影響の専門家である私達が、自分達の持つ知識
1 X X X 1 2 1895 11 TV 96 98 1975 M T1/2 M T g A × × = 2 / 1 16 10 32 . 1 / 226 1600 370 Ra-226 3 U-235, U-238 Pu-239 Pu-239 24100 U-235 7 U-238 45 U-235 2mg 2000 g U-238 14mg 1 4100 g Pu-239 0.000052mg 0.052 g DQN H = 4 5 6
1 ウラン残土市民会議 2008年11月22日 (土) ウラン残土レンガと放射能の基礎知識 京都大学・原子炉実験所 小出 裕章 Ⅰ. 大量の被曝をした場合の危険 放射能は五感に感じない 「放射能は五感に感じない」とよく言われます。 「放射能」とは、もともとは放射線を出す能力を意 味する言葉です。 それが日本では 「放射性物質」 を指すためにも使われています。 たとえばウランは 「放 射能」だと言われますが、それはウランが「放射性物質」であることを示しています。そして、物質で ある以上、重さもあるし、形もあります。目で見ることも、触ることも、場合によっては匂いを感じる こともできるものです。しかし、もし放射性物質が五感に感じられるほど存在するようになると、人は 生きていられません。 2006 年 11 月 23 日、旧ソ連国家保安委員会(KGB) 、ロシア連邦保安庁(FSB)の元職員アレクサ
チェルノブイリ原発事故:何がおきたのか 今中 哲二 京都大学原子炉実験所 1.はじめに 原発の安全性は、運転にともなって原子炉内に蓄積される膨 大な放射能をいかに完全に閉じこめておけるかにかかっている。 原発建設にあたっては「多重防護」の考え方が採用され、さま ざまな事故を想定した安全装置が設けられており「万が一の場 合にも周辺公衆に放射能被害をもたらさない」ということにな っている。しかし、想定されていた範囲でものごとが収まり切 らないのは、原子力に限らず経験するところである。原発の場 合、安全設計の範囲を越える事態、つまり、大量の放射能放出 に至る可能性のある事故として次の二つが考えられている。そ の一つは、炉心での核分裂連鎖反応のコントロールに失敗し出 力が急上昇する「暴走事故」、もう一つは炉心の冷却に失敗し て高温になって溶融に至る「冷却材喪失事故」である。1979 年 3 月 2
チェルノブイリ原発周辺 30km 圏避難住民の被曝量の再検討 今中 哲二 京都大学原子炉実験所 1.はじめに チェルノブイリ事故が起きたのは 1986 年 4 月 26 日であるが、その翌日 27 日の午後、原発に隣接するプリ ピャチ市の住民 4 万 5000 人が避難した。 一方、 プリピャチ市以外の 30km 圏内村落の住民避難は大きく遅れ、 5 月 3 日にはじまりそ 5 月 10 日頃に終了した。 避難した人数は、 プリピャチ市を含めたウクライナ側 9 万 1000 人、ベラルーシ側 2 万 5000 人の合計 11 万 6000 人とされている。 チェルノブイリ事故 20 年のまとめとして 2005 年 9 月にウィーンの IAEA 本部で開かれた 「チェルノブイリ ・ フォーラム」の報告書 1) によると、事故直後に 30km 圏から避難した人々の外部被曝は、平均で約 30mS
( 3 ) 「科学・社会・人間」108 号(2009.3.) チェルノブイリ事故現場での数日間の個人的な体験 ニコライ・カルパン(翻訳: 今中哲二* ) チェルノブイリ事故についてはこれまでに膨大な数の報告書や本が出版され、また新 聞やテレビを通じて様々な情報が流されてきた。しかし、事故が起きてこの 4 月で 23 年 になるが、いまだ事故当時のドサクサで起きたことが明らかになっていない。チェルノ ブイリ4号炉が暴走し爆発に至るプロセスやその爆発の正体についていまだ定説はない し、事故の翌日に現場に入ったソ連陸軍化学部隊による事故処理活動の詳細も闇の中で ある。 本稿の筆者、 ニコライ・カルパンは、 チェルノブイリ原発の元核安全課副主任で、 事故当日の朝に現場に駆けつけた。今中は 2006 年に彼の著書「原子力平和利用の復讐」 (Kantri Layf、Kyiv、2005)を知り、以来連絡
1 1 低レベル被ばく影響に関する 低レベル被ばく影響に関する 最近の報告より 最近の報告より 今中哲二 今中哲二 第 第106 106回原子力安全問題ゼミ 回原子力安全問題ゼミ 2009.3.6 2009.3.6 2 2 今日の主役 今日の主役 “ “ミリシーベルト( ミリシーベルト(mSv mSv) )” ” 1シーベルト( 1シーベルト(Sv Sv) ) = =1000 1000ミリシーベルト ミリシーベルト 1マイクロシーベルト( 1マイクロシーベルト(μ μSv Sv) ) = =1000 1000分の1ミリシーベルト 分の1ミリシーベルト 3 3 放射線作業従事者として 放射線作業従事者として ‘ ‘被ばく 被ばく’ ’に対する感覚 に対する感覚 1 1μ μSv Sv:気にしない程度 :気にしない程度 自然放射線被ばくは1日で約3 自然放射線被
第106回原子力安全問題ゼミ 2009.3.6 年間X線検査回数/1000人 リ ス ク ( % ) (3.2%, 7,587人) (2002年12月現在 世界のCT装置台数は41,000台 日本のCT装置台数は12,868台) Berrington A. G.他, Lancet, 2004 日本 CTを入れると (4.4%, 9,905人) 英国 スエーデン オーストラリア クロアチア ドイツ ノルウエー 米国 スイス ポーランド 医療被ばくは世界でダントツ一位 ●低線量放射線は安心、安全である を強調し、医療被ばくを いかに減らすかという視点が欠落。 ●正確な情報を明らかにしない。 東京新聞2007年3月9日 5000冊頒布 信濃毎日新聞 2006年12月3日 朝日新聞 2006年12月25日 2008年7月第1刷 2000冊 2009年3月第2刷 2000冊 「本の花束」 2009年
1 「終焉に向かう原子力」 (第7回) 2008年12月13日(土) なぜ六ヶ所再処理工場の運転を阻止したいのか 京都大学・原子炉実験所 小出 裕章 Ⅰ.再処理は核開発の中心技術 原爆の強烈な破壊力 1945年3月10日、 東京は300機を超えるB29による空襲を受け、 下町を中心に市街地の40%が灰燼に帰し、 10万人の人々が焼き殺されました。その時に雨あられと投下された焼夷弾の量は1665トンでした(平凡 社、世界大百科事典)。その5か月後、広島、長崎に原爆が投下されました。広島原爆の爆発力は火薬に 換算して16キロトン、すなわち1万6000トンで、長崎原爆のそれは21キロトン、2万1000トンでした。そ して、それぞれ10万人の人々が筆舌に尽くしがたい苦悶のうちに短期日に死亡し、幸か不幸か生き延び た人々は被爆者となって、その後の人生を奪われました。 ウラン原爆 ウランの核分裂現象が
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