涼は嘉陽学園大学理学部物理学科2年生である。大学は、普通3年生または4年生から指導教官の研究室に入って卒業論文の作成に取り組む。嘉陽学園大学の物理学科の場合では3年生からであるが、涼は2年の新学期から入っている。 これは、指導教官である物理学科の真柄真治教授の意向である。 教授は、既存の物理学の範疇では理解できない『触媒回路』を理論的に解明したいと目論んでいる。これは、すでに軍事・産業利用が始まっており、実用できることはすでに証明されている。 普通、様々な発明品は、それが出来ることが理論的に示唆されて、その方向で開発が試みられて実用化される。原子力の利用法である発電や核爆弾はその典型的なものである。しかし、触媒回路の作用と応用は、それまで類する理論はかけらもなく、突然完成した形で現れた。 それも従来の物理学ではありえない現象を見せているのだ。従来の物理学は、その法則に従う現象を正確に裏付け