5月17日 火曜日 曇り ビンラディンが殺されてからと云うもの、ひっきりなしに上空を戦闘機が飛び交っている。人々の日々を切り裂きながら飛んで行く。ここに住んでいると、世界の情勢の変化が分かる。本当の話だよ。 事情があって、僕は遺言を書き直すことになった。云うまでもなく、それは財産に関する話ではない。そんなもの、ないに等しい。死んでまで、人に迷惑を掛けたくない。ただ、それだけの話。それは独りで生きる者の義務。誤解のないように書いておくと、すぐ死ぬって話でもない。僕は多分、健康だ。どう死にたいのか、考えておかないと、どう生きていいのか分からない時代に僕らは暮らしている。それが「覚悟」の意味だと、僕は思う。 僕より5つも年上なのに、どういう訳か僕より長生きすることになっているNYの兄貴分に連絡した。「お前を燃やして、ドニゴールの引き潮、上げ潮の差の大きい例の湾に散骨するからね。先に行きやがってこ