中村文則さんの「R帝国」を読み終えた。 近未来の架空の島国・R帝国を舞台にしたディストピア小説である。 あまりにも暗く、救いのないストーリー。でも現実に限りなく近いところが面白く、色々考えずにはいられなくなる一冊だった。 物語は「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」 ところから描かれる。 戦争のニュースが流れる中、主人公矢崎の小さな悩みは朝ご飯を目玉焼きライスパックにするか、ベーコンブレッドパックにするか、だ。 R帝国の人々はHP(ヒューマンフォン)と呼ばれる人工知能を持つ携帯電話を肌身離さず持っている。それぞれ異なる個性を持つ持ち主のためだけの『オトモダチ』。 戦争や、思わぬ地震。 なにかが起きるたびに、皆HPに釘付けになる。 目の前で起きていることではなく、HPが調べてくれる画面の向うの現実に夢中になっている、そんな近未来。 ただの地震だと思われた揺れが、他国の無人戦闘機と大型兵器によ