急逝したid:hebakudanさんを偲んで、自分のTumblrに残しておいた言葉から一部をポストする。記事タイトルがある場合、リンク先から「血止め式」に掲載された年月日は分かるが、現在では削除されてしまって読めない。 心底「われ一人だけ」の立場に陥ったことがある人は何としてでも自分の言葉の力で他人と渡り合うしかなくなる時の苦しみを知っている。「本当は相手側に不足があるのではなく、相手の持つものを充分感じ取れるアンテナが自分の側に不足しているのではないか」という自己懐疑は、己の言葉の貧しさを自身の内側で切実に感じ得ることによってしか生まれないからだ。 ― 血止め式 ■太宰治『きりぎりす』 (新潮文庫1974) 「お別れ致します。あなたは嘘ばかりついていました。」という書き出しで始まる、妻から夫への絶縁状小説。語り手の妻は比較的裕福な家で生まれ育った娘だが、好条件の縁談をいくつも蹴って貧しい