2月にロシア軍によるウクライナ侵攻が開始されてから、日本でもロシア側によって作成されたと思しきフェイク・ニュース動画が話題になった。同じ人物が全く違うシチュエーションの動画に複数回登場したり、背後に映りこんでいる風景が明らかにウクライナでなかったりなど、その雑な造りがしばしば間違い探し大会を引き起こしたことは記憶に新しい。セルゲイ・ロズニッツア監督の『ドンバス』(2018年)は、フィクションの親玉である映画の側から、そのような雑なフェイクの種明かしをしつつ、本気のフィクションがどれほどリアルに迫れるのかを突きつけてくる。 冒頭の場面はいきなりフェイク・ニュースの撮影風景から始まる。役者たちはトレーラー内で支度し、ディレクターの指示でウクライナのテロリストに怯える市民の役を演じ始める。そしてこれ以降のすべてのエピソードは、これらの人びとによって制作されたフェイク・ニュースという体裁をとる。な