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ブックマーク / jp.ign.com (8)

  • 『君たちはどう生きるか』あるいは「少年とサギ」レビュー 宮崎駿監督の創作の源流に触れることができる一作

    稿は映画『君たちはどう生きるか』のレビューです。物語の内容に触れる記述があるため、作品鑑賞後の閲覧をおすすめします。 “たとえば積み木の王国。積み木の王国という名称はすでになく、それらを作り上げていった幼いころの記憶は、あなたの中に、もうどこにもない。覚えていないし、わたしからこうやって聞いても、思い出せない。それはあなたの中の、想像が織りなす世界で、大切な外壁、支柱、外装などの一つとなって、他のことと複雑に折り重なり、編み込まれているから。それが、残像です。逆に言うと、あなたの想像の世界を支える大切なパーツになってしまったから、記憶は完全に消えたのです。形や姿を変えたのではなく、一部になったんです” 村上龍『MISSING 失われているもの』より。以下、稿の太字引用部分はすべて同作から。 映画が開幕しておよそ5分。たったそれだけの時間を観ただけで、これまで自分が書いてきた他のアニメ

    『君たちはどう生きるか』あるいは「少年とサギ」レビュー 宮崎駿監督の創作の源流に触れることができる一作
  • 『雨を告げる漂流団地』レビュー:おそらく団地映画、最後の傑作

    稿は2022年9月16日よりNetflixで全世界配信&全国ロードショーとなる長編アニメ映画『雨を告げる漂流団地』のレビューです。 『雨を告げる漂流団地』はおそらく日の団地をモチーフとした映画で最後の傑作となるアニメである。決して大仰に言っているわけじゃない。そもそもの団地自体がいま日各地で建て替えや取り壊しが続いており、団地の時代が終わり始めているからだ。 団地は戦後の住宅難を解消するための施策であると同時に、新たなライフスタイルの象徴でもあった。団地の誕生によって家族の形からある種の社会の形まで変わったことは、各時代のフィクションなどからうかがえる。しかし近年は老朽化などに伴い、各地で建て替えなど今後を問われる状況にある。 そんな消えゆく団地の時代を、作はなんとストレートな冒険映画に仕上げているのだ。『陽なたのアオシグレ』(2013年)や『ペンギン・ハイウェイ』(2018年)の

    『雨を告げる漂流団地』レビュー:おそらく団地映画、最後の傑作
    msdbkm
    msdbkm 2022/09/18
    "映画『団地』(2016年)"
  • 『Ghostwire: Tokyo』は「AAA級のオープンワールド的ゲーム」“でなければ”、傑作たりえたのではないか

    2022年3月25日に発売された『Ghostwire: Tokyo』は、緻密に作られた東京が非常に高く評価されているゲームだ。しかし、同時に大きな欠点もつきまとう作品である。 作は、人が消えた渋谷で怪異と戦うアクション・アドベンチャー。スレンダーマンのような化け物などと戦ったり、印を結んで封印を解いたり、又の店で買い物をしたり、都市伝説として有名な「きさらぎ駅」にまで行けると話題の作品だ。 一方で、このゲームは「戦闘がつまらない」と言われるケースが多いほか、「オープンワールドの作品としては退屈すぎる」といった評価がどうしてもつきまとってしまう。しかも単なる欠点ではなく、場合によってはかなり根深い問題だと評されることもある。 なぜ『Ghostwire: Tokyo』はこのような状態になっているのか? それを考えると、作が「AAA級のオープンワールド的ゲーム」であるゆえに問題を抱えている

    『Ghostwire: Tokyo』は「AAA級のオープンワールド的ゲーム」“でなければ”、傑作たりえたのではないか
  • タニグチリウイチの「今のアニメを知るために」:第8回 見里朝希監督の『PUI PUI モルカー』が生き生きとしているワケ

    『PUI PUI モルカー』、『ポプテピピック』、『ジュラしっく!』。人形アニメもあればクソアニメや老舗アニメ制作会社の実験作品もあってと、脈絡なく並んでいるタイトルに共通しているのが、東京藝術大学大学院の映像研究科アニメーション専攻から出たクリエイターたちが関わっているという点だ。いずれも、独特のテイストを持ったアニメーションを商業作品の中で見せ、話題になっている。藝大に限らず芸術系の大学でアニメーションを学び、商業作品に携わるクリエイターも少なくない。アカデミズム出身者による作品の、いったい何が注目を集めているのか? 『蜘蛛ですが、なにか?』を始め、小説投稿サイトから出た作品のアニメ化が相次ぎ、『呪術廻戦』や『進撃の巨人 The Final Season』といった漫画原作のアニメも好調な2021年のアニメ戦線で、ぐいっと抜け出した作品が、『PUI PUI モルカー』だ。 監督したのは、

    タニグチリウイチの「今のアニメを知るために」:第8回 見里朝希監督の『PUI PUI モルカー』が生き生きとしているワケ
  • イッキ見しよう!20年前のカルトアニメ『serial experiments lain』は情報化社会の欲望と混乱を描いた今でも観る価値のある作品

    10年前、青土社が出している批評誌「ユリイカ」の2010年10月号「特集=安倍吉俊」に、1998年放送のテレビアニメ『serial experiments lain』に関する文章を寄せた。安倍吉俊がオリジナルキャラクターデザインを手がけた作品だったからだ。 文章では、誰もが簡単に情報をネットに上げ、手元の端末でどこにいても情報を取り出せるようになった社会が描かれていることを挙げ、「個人情報の漏洩を招き、特定個人への誹謗中傷を呼び、個人の尊厳を奪って絶望へと追いやる。そんな、ネット社会のダークサイドすらも予想していたところが、『lain』の凄み」だと書いた。 そして、「ネット状況の描写においても『lain』は、初登場の時から2010年を射程に入れた先進性を持った作品であり、また2010年においてもなお、未来を示唆する作品なのだ」と讃えた。大いに見誤っていた。隅々まで届くネットの上の膨大な言葉

    イッキ見しよう!20年前のカルトアニメ『serial experiments lain』は情報化社会の欲望と混乱を描いた今でも観る価値のある作品
    msdbkm
    msdbkm 2020/07/13
  • SF史に残る(べき)ゲームたち:第13回『Detroit: Become Human』――アンドロイドの社会参加(アンガージュマン)

    デヴィッド・ケイジ監督の『Detroit: Become Human』は、フランスのクアンティック・ドリーム社が手掛けたインタラクティヴ・ドラマである。このゲームは、現代ゲームの最良の成果であり、SF史に残るべきのみならず、ゲームファンやそれ以外の人々は皆触れる価値のある作品である。もしまだプレイしていないなら、ネタバレがあるので、この文章はまだ読まない方がいいかもしれない。 インタラクティヴ・ドラマとは、ゲームというメディアを生かした、インタラクティヴな動画作品のことだと言っていいだろう。映画などの、始まりから結末が決まっている物語とは違い、プレイヤーが介入し参加することが物語や結末を変えていくドラマである。『ファーレンハイト』『HEAVY RAIN 心の軋むとき』に『BEYOND: Two Souls』などの作品があるが、作はおそらく現時点での最高傑作である。 選択肢を選んで分岐する

    SF史に残る(べき)ゲームたち:第13回『Detroit: Become Human』――アンドロイドの社会参加(アンガージュマン)
    msdbkm
    msdbkm 2020/04/13
  • リズと青い鳥 - 映画レビュー - 『リズと青い鳥』レビュー

    『リズと青い鳥』は沈黙の音を描き切る。吹奏楽を題材にした音楽のアニメであるにもかかわらず、深い沈黙をすくいあげる。わかりやすい言葉はなく、感情移入を促す劇伴もない。 にもかかわらず印象深い長編である。この沈黙がアニメでまず見ることがない繊細な感情表現を実現しているからだ。少なくとも現在、国内の商業アニメにおいてこの感情表現を比較できる作品はない。 『リズと青い鳥』は沈黙の音を描き切る。 沈黙とはもちろん無言でいることじゃない。建前のおしゃべりはいくらでもする。なのに大事なところで心や演奏技術が噛み合わない時、沈黙は現れる。沈黙は編の『響け! ユーフォニアム』でも少なくなく描かれてきた。さまざまなパートごとの対人関係のすれ違いをはじめ、集団の規律の中で演奏する吹奏楽だからこそ沈黙は重たくのしかかる。 セッションで誰かのミスで中断するとき。吹奏楽部内で頑張ろうとする建前と音がずれるとき。

    リズと青い鳥 - 映画レビュー - 『リズと青い鳥』レビュー
    msdbkm
    msdbkm 2018/04/22
    “ 沈黙とはもちろん無言でいることじゃない。建前のおしゃべりはいくらでもする。なのに大事なところで本心や演奏技術が噛み合わない時、沈黙は現れる。”
  • ジブリ出身クリエイターによる劇場版アニメ「メアリと魔女の花」レビュー

    「普通の子供向けファンタジーです」 「メアリと魔女の花」を見た感想を、知人にひと言で伝えるとすればそうなる。しかし作が世に出る2017年の夏という状況は、それを許さないだろう。なぜなら作は「普通の子供向け」以上の期待を背負わされている作品だからだ。 「メアリと魔女の花」はスタジオジブリで「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」を手掛けた米林宏昌監督が同スタジオの制作部門の休止にともない、同じくジブリで「かぐや姫の物語」「思い出のマーニー」を手掛けた西村義明プロデューサーとタッグを組み、新たな制作母体「スタジオポノック」で取り組んだ第1回長編アニメ映画。メアリー・スチュアートの児童文学「The Little Broomstick」を原作とし、禁断の花を巡る少女メアリの冒険を描く。声の出演は主人公のメアリに杉咲花、ピーター役に神木隆之介、ほか豪華俳優陣が多数参加。また主題歌をSEK

    ジブリ出身クリエイターによる劇場版アニメ「メアリと魔女の花」レビュー
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