現代日本に生きる自然言語があった 現代の日本に、日本人の知らないまったく別の文法や言語系統を持つ“もうひとつの日本語”が存在している。それは英語やハングルのことを指しているのではない。そのような事実を知らされたら、「一体なんのこと?」と驚くのではないだろうか。かくいう私もその1人だった。 そのもうひとつの日本語とは、手話のことだ。多くの人は、手話とは単に日本語の音声を手のサインに置き換えたものと考えている。しかし、手話はれっきとした自然言語であり、その誕生は音声言語と同様に古い。手話に関する最古の記録は4世紀以前に書かれたユダヤ教の律法書に確認でき、世界各地で独自の発展を遂げてきた。もちろん細かい文法や語彙もあり、それを習得することで、哲学や心理学なども含めこの世の森羅万象を語ることができる。日本には日本手話が、アメリカにはアメリカ手話があり、世界各国の手話のほかに「方言」も存在している。