中学2年生の頃に本屋で偶然出会ったのが、荘子だった。「人皆知有用之用 而莫知無用之用也」(荘子 内篇)そこには、人の役に立たないがゆえに天寿を全うする、樹木のことが書かれていた。高度成長の負の遺産や受験戦争に心を痛めていた私は、「かくありたい!」と膝を打ち、その道行きをはじめた。といっても、有用になるのを避け友人宅に入り浸って麻雀を始めただけだ。翻って本書は、101種の「有用材」を写真と文章で紹介した、人と木の歴史がつまった図鑑だ。植物図鑑と材木図鑑の良さを兼ね備えた、稀有な一冊である。 見開きに一樹種で、非常に見やすい。立木、葉、樹皮、建築物、家具・・・600点にも及ぶ写真のほとんどが撮り下ろしで、しかもページレイアウトが樹種ごとに違う。表紙や紙質など工夫が凝らされていて、見るからに愛情の産物であることがわかる。有用であることも、なかなか隅におけないものだ。しかも、これだけ手が込んでいて