→紀伊國屋書店で購入 エーコが美術史家のジローラモ・デ・ミケーレとともに編纂した西洋三千年の美の歴史である。450ページ近い大冊に300点以上の大判のカラー図版がひしめいており、美しい印刷、ゴージャスな装丁、ずしりとした重さと所有欲を満たしてくれる本だ。 姉妹編の『醜の歴史』も邦訳されているが、第三作となる "The Infinity of Lists"(『無限のカタログ』)も欧米で好評を博している。 最初に芸術の歴史ではなく美の歴史だと断ってあるように、本書は単なる美術史の本ではない。図版とともに古代ギリシアから現代にいたるさまざまな文章が引用されており、美をめぐる詞華集ともなっているのだ。 美術史としては特にどうということはないが、哲学や神学や文学、さらには社会史までからめるとなると博識をもって鳴るエーコの独擅場である。 古代ギリシアにおいて美が自覚的に論じられるようになった時、ピタゴ