中国山地の山の中、1日6往復しか列車の走らない福塩線というローカル線の小さな駅・甲奴。木造の駅舎こそあるもののもちろん無人駅で、朝と夕方に通学の学生たちで少しだけ賑わう程度のザ・ローカルの趣たっぷりの駅なのである。そんな小さな駅の駅舎の傍らに、お好み焼き「美里歩(おりーぶ)」は店を構える。営むのは、地元に生まれ育った奥田弘士さん。齢75にして、いまだに現役バリバリだ。 甲奴駅の駅舎。左がお好み焼き「美里歩」 今は甲奴駅に列車はやってこない 「もうはじめて20年近くになりますかね。町が駅舎で店をやる人を募集していたので、手を挙げたんですよ。せっかくの駅なのに誰もいないと寂しいでしょう。だからここでお店をやりながらね、観光案内みたいなこともしてるんですよ。まあ、観光客はめったに来ないんですけど(笑)」 奥田さん、手際よくお好み焼きをつくりながらこう笑う。が、観光案内もなにも、今は甲奴駅には列車