→紀伊國屋書店で購入 おどろおどろしい題名だが、『トマスによる福音書』を中心に、グノーシス文書を一般読者向けに解説した本である。『トマスによる福音書』は早くに隠滅され、1945年にエジプトでナグ・ハマディ文書の一部として発見されるまでは幻の書だっただけに『禁じられた福音書』という邦題は当たっていなくもない。 著者のエレーヌ・ペイゲルスは初期キリスト教史の研究者だが、ハイスクール時代は福音主義にかぶれ、『ヨハネによる福音書』の熱烈な読者だったという。しかし、友人が交通事故で死亡した時、教会の仲間たちは彼がユダヤ人だという理由で自業自得のようにくさした。ペイゲルスは信仰に疑問をおぼえるようになり、大学では初期キリスト教史を専攻した。初期の純粋で単純な信仰に立ちかえれば疑問が晴れるかもしれないと考えたのだ。しかし、疑問は晴れるどころか、逆に深まった。最初の二百年間のキリスト教はさまざまな思潮が流