渋谷にて。グラフィティアーティストのバンクシーが監督した作品。とてもエキサイティングな映画でした。なんらかの表現を行い、それがアートとしての文脈を獲得し、芸術的表現として成立するための条件とはなにか、という興味ぶかいテーマを扱っており、結果として「アートの再定義」という主題へかなり根源的に接近しているのではないかと感じました*1。グラフィティの違法性なども刺激的だったのですが、後半の展開はより「そもそも表現とはいったい何か」というテーマに近づいていき、随所で笑いながらも納得させられました。 ある芸術作品が優れているかどうかを判断するのは、究極的には誰なのだろうか。それは批評家なのか。もしくは大衆か。どのていどのポピュラリティーを獲得できたかという数値か、あるいは作品についた価格だろうか? これは、あらためて考えてみると意外に答えの出ない問いである。表現行為とスポーツが異なるのは、表現にそも
新宿にて。とある男女関係の始まりから終わりまでを描いた作品。なんというか、とてもせつない雰囲気の映画でした。愛情の終わってしまう瞬間はとてもさみしいもので、誰にとってもできれば直視したくない場面なのですが、それをここまでリアルに描かれてしまうと、見ながらだんだん心が弱っていくのが感じられます。つい自分の身に置きかえて考えてしまうのも、こうした映画の特徴かも知れません。類似性を指摘されている『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』(’08)も再見し、さらに心が弱ってしまいました。主演は『ラースと、その彼女』(’07)のライアン・ゴズリングと、『ブロークバック・マウンテン』(’05)のミシェル・ウィリアムズ。 男女の愛情関係が破綻してしまったとき、われわれはつい「どちらが悪かったのか」ということを考えてしまう。私も例にもれず、作品を見終えてまず考えたのは「どちらのせいで、この関係は終わ
村上春樹原作の小説を、ベトナム系フランス人のトラン・アン・ユン監督が映画化。村上春樹の長編小説は、おそらく映画化がもっともむずかしい部類の原作ですが、そのことにはいくつかの理由があるとおもわれます。そしていまから、なぜ村上春樹の小説は映画化がむずかしいかについて考えてみようとおもいます。原作を繰りかえし読んでしまっていて、どうしても原作との比較になってしまい、映画を見るために必要な「原作から切り離した個別の作品としてとらえる作業」がうまくできなかったため、映画そのものの感想につなげられないかもしれません。また長編小説を133分におさめることの困難もあるとおもわれ、重要とおもわれる3つのポイントについても自分なりに推測してみました。 1、声にするとリアリティがなくなる 今作でもっとも印象的なのは、登場人物たちの会話です。映画は、原作のせりふをほとんど変えずに使用する手法で撮られており、このこ
新宿にて。初日。すばらしい!! とてつもない作品でした。「観客の期待値を超えることが前提」というピクサー作品にあって、決して失敗の許されない『トイ・ストーリー』シリーズという看板作品の続編をリリースし、それがもはやこれ以上のエンターテインメントは考えられないほどに最高のクオリティであるという事実にふるえました。シナリオ、題材、映像、ストーリーテリング、テンポ、キャラクターなどすべてに隙がなく、笑わせ、驚かせ、感動させるといった要素があくまでエンターテインメントの枠組のなかで完成され、4歳の子どもにも理解できる平易さで描かれている。すごい! できるだけ内容に触れないようにインプレッションを記したいとおもいます。 『トイ・ストーリー』シリーズ3作が一貫して描いてきたテーマはふたつある。今作がすばらしいのは、このふたつのテーマにしっかりと決着をつけ、作品において回答を提示している点だ。『3』に続
新宿にて。初日。ジェイソン・ライトマン新作。おもしろい! すごくよかったです。これ、ほんとうにいい映画だった。細部までとてもていねいに作られていて、すべての人物やせりふ、行動がきれいにつながっていく展開になっている。かなりすきなタイプの作品でした。冒頭の数分だけ見た段階でも「あ、これはぜったいおもしろい」とわかるような映画で、ほんとうにたのしかった。ジェイソン・ライトマンは『JUNO』の監督でもあって、わたしは『JUNO』がとてもすきだったのですが、今後も彼の仕事をフォローしていきたいと確信しました。 主人公(ジョージ・クルーニー)は、リストラを計画している企業から依頼を受けて、企業の代理で従業員に解雇を通告するという仕事を請け負う男。不況のあおりで仕事は忙しく、アメリカ全土を飛行機で飛びまわっては、ひたすらクビを宣告していく日々。彼は年間のうち322日を飛行機での移動に費やしており、10
こんにちは、伊藤聡です。このたび、初めての本の発売にあわせて、たのしいトークイベントをすることになりました。人前で話した経験などほとんどないわたしですが、このイベントに限っていえば、実はまったく不安のない状態です。なぜなら今回、とても心づよい味方になってくれる、かわいらしくてすてきなゲストがやってきてくれるからです。 それはなんと……岸本佐知子さん!! わたしがこのブログを通じて、「だいすきだいすき」と書きつづけてきた、あの岸本佐知子さんがやってきて、一緒にトークイベントをしてくれます! こんなにすごいことがあるだろうか。憧れの岸本さんが、わたしと一緒にイベントに参加してくれる。この組み合わせは、おそらくそうめったには見られないはずので、ぜひきてください。岸本さん、了承くださってほんとうにありがとう。がんばる! 日時は、1/31(日)のお昼12時からです。場所は阿佐ヶ谷ロフトというところで
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