あれほど綺麗に優雅に「肛門」と言える女性を、「水戸黄門」の由美かおる以外に僕は知らない。声の主は美しいナース。美しかった。美しすぎた。一瞬、ユーキャンで医療事務資格を取得したいと思ったくらいだ。もし、彼女に出会わなかったら、僕はあの検査を受けなかったかもしれない。 話は遡る。 僕は健康診断のいくつかの項目で「要検査」の診断を下されていた。特に大腸は早急に精密検査を受ける旨が診断書に書かれていた。 大腸の検査には、内視鏡を入れる大腸内視鏡検査と、バリウムを入れる注腸検査の二種がある。僕と妻は、南青山のレストランで僕の肛門に何を入れるかについて話し合い、そして決めた。僕は、内視鏡を、入れる。妻と決めた。いや、妻が決めたのだ。妻はまるでカルトの教義を繰り返すように主張した。「肛門に入れるなら、絶対、黒くて、硬い、カメラよ。それしかないわ」。 内視鏡検査の申し込みに行った病院の受付、そこに由美かお