美しく崇高な銀盤のバトルは、オリンピック代表選考だけがテーマではない。それぞれのストーリーがあり、追い求めるテーマがある。だからこそ誰もが持てる全ての精力を傾注する。だからこそ見る者の胸に響く演技が生まれる。 12月21日から24日まで東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで行われているフィギュアスケート全日本選手権。男子シングルに出場している鈴木潤(北海道大4年)にとってここは「去年の借りを返すために来た場所。去年失ったものを取り戻したい」という思いを抱いて臨んでいる大会だ。 ■悔しさとうれしさの混じったSP 22日のショートプログラム(SP)。「SPは僕自身の理想を追い求めてつくったプログラムです」と話す鈴木は、『月の光(ドビュッシー作曲)』のしっとりとした調べに乗せ、情感を込めて滑った。ゴッホの名作絵画『星月夜』や『夜のカフェテラス』を思わせる深い青の衣装に身を包み、月の引力がごとく、観