タグ

ブックマーク / note.com/6016 (6)

  • 卵サンドと私と。|きなこ

    私が初めて妊娠して、その妊娠をそのまま継続し、出産したのは30歳の時だった。 相手は普通に今の夫。 今の夫と言うと、じゃあ過去にもう1人か2人夫がいたのかと文脈に無駄な余白を残してしまうけれど、私の人生に今のところ夫は1人、そして直近のメンバー交代の予定はない。多分。 普通に結婚して、特に何の疑問も持たず妊娠する事を希望し、幸いな事に妊娠する事ができた私は、市販の検査薬で陽性反応が出たからと、人生初の妊婦検診にと近くの産婦人科医院に赴き 「あ、妊娠してますね」 という盛り上がりにいまいち欠ける「あ、奥さん外晴れましたよ」位に結構ライトな感じでその確定を告げられた時、私には実感とか喜びとかそれより先に 妊娠それ自体 大きくせり出してくるだろうお腹 周囲への事実の報告 その手の事が途轍もなく恥ずかしいと言う感情が襲った。 妊娠とか出産という物語の周辺は兎角柔らかで優しくハッピーな装飾を、例えば

    卵サンドと私と。|きなこ
  • 短編小説:月とナポリタン|きなこ

    ☞1 僕に兄がいたのは小学校1年生から4年生の3年間の間の事だ。 父が勤めていた建設会社から独立して、何人かの仲間と古いマンションや中古住宅をリノベーションする事業を始め、それが当たってとても忙しくしていた頃、温かな雨の降る春の雨の夜に突然、父は家に妙に髪の色の赤い女の人と、そして髪を短く刈り込んだ男の子を家に連れて来た。 当時、僕は小学校に入学したばかりで、実の母親を1年前に亡くしていた。それで、手元に残された僕とその周辺に色々と手の行き届かなくなった父が、継母と兄を僕に用意した。父にはそう説明を受けた。 「この人がお母さんで、こいつがお兄ちゃんだ。これからお前の面倒を見る」 実際、僕には小学校に入学する日の朝、ランドセルが用意されていなかった。 「オマエ、なんさい?」 あの年の春は、温かくなるのがとても早かった。桜前線は3月の半ばに僕の住む街にやって来て、4月が来る前に、初夏の日差しが

    短編小説:月とナポリタン|きなこ
  • 夫が会社に行けなくなった話 後半|きなこ

    夫が『うつ状態』になった2016年から3年後の2019年5月 今度は私が精神科にかかる日が訪れる。 それもガチの精神医療センターの精神科に。 その頃発達障害児でその状態がフィバーしていた息子と、2017年に生まれ、4ヶ月の入院と11時間半の手術の後、やっと手元に帰ってきたものの2回目の手術を控えてリハビリ三昧だった心臓疾患児の娘②を丸抱えしている状態に心が折れたが為に それはもうポッキリと、いとも無残に。 自分の心の内は見た事ないが やっと2度目の手術に漕ぎ着ける娘②が明日突然死んじゃったらどうしようと、そして同時に無事に生かして行くこと自体ももう辛い、辛いったら辛い、そればかり考えて眠れなくなってしまった。 精神科案件は突然に。 そして、この病院セレクトは2016年のあの時、その手のドクターがそう易々とは捕まらないということを学んだ私が、敢えてガチの精神科に自らをブッ込むという浅知恵を働

    夫が会社に行けなくなった話 後半|きなこ
  • サンタにラーメンを奢られた話|きなこ

    30歳で母になったので、30代から以後、今日までクリスマスといえば子ども達のものだ。 とは言え、この10年絶妙に歳の差を開けて自給自足で幼児を家庭に供給し続けている我が家ではクリスマスツリーを設置すれば途端にオーナメントは剥ぎ取られ、もみの木は葉が毟られそして、体に登頂を試みる奴が絶対現れるので飾ってはいない。 というか飾ってはいけない。 クリスマスツリーを目の前にした幼児、アイツらは。 毎年卓上用の小さなツリーと、陶器のサンタクロース、それから聖家族の置物を狭い自宅の飾り棚に置き、子ども達の好物の献立を作る。 大体唐揚げを山盛り揚げておけば間違い無い。 はずが今年は『きのう何べた?』にハマっている息子が 「俺はラザニアがべたい」 という果てしなく面倒臭い注文をつけてきた。 『きのう何べた』は青年誌に連載している『弁護士のシロさんが恋人の美容師ケンジと暮らしてひたすら飯を作って

    サンタにラーメンを奢られた話|きなこ
  • 一人暮らしとクロさんの思い出の話|きなこ

    「20歳の時、京都で一人暮らししてたんやで」 と言ったら息子に 「おかーさんに20歳の時ってあったんやな!」 と言って驚かれた。 お前はこの母がこの世に生まれたその時から40過ぎやと思ってたんか。 お母さんにも勿論20歳の時があった、そしてそれが20年前の、それも20世紀末の話だと気づいた今、目眩がしたが 学生時代は遠くなりにけり。 時をかけるお母さん。 そんな昔々は女子大生だった私が一人暮らしを始めたのは、大学2回生の終わりの春休み。 それまでは女子ばかり集めた古い学生寮のような所に住んでいたのを、3回生でキャンパスが変わることをキリに、狭くても暗くても何でも良いから一人だけの部屋が欲しいと一念発起した。 女子寮には、仲間もいたし、泥棒が来ようと痴漢が来ようと意外と女子だけでも数が居る分力強くて安心で、楽しくはあったが何しろ 二人ひと組の相部屋で、門限もあった。 学生生活是即ちアルバイト

    一人暮らしとクロさんの思い出の話|きなこ
    musubi-sekirei
    musubi-sekirei 2019/11/24
    豊かな一人暮らしだ
  • 羽生結弦君と私とおじさんの話|きなこ

    人なら知らぬ人は居ない あの世界一、氷上にくまのプーさんを舞わせる男、 稀代の天才、 氷の妖精、 冬の神様に愛された男、 オリンピックゴールドメダリスト。 羽生結弦君だ。 今年もフィギュアスケートのシーズンが始まり、氷の国のプリンスであるかのような彼の麗しいお姿を拝見して 私は、羽生結弦君に助けてもらった日の事を思い出した。 お前は羽生結弦君の何だ。 そして誰だ。 当然、彼に直接会った訳では勿論無いし、多分、今生あんな皇室級の貴人に会う事も多分無いが 2018年の2月17日平昌オリンピック、フィギュアスケート男子決勝フリーの日 これはもう無理。 ハイ解散。 そう思って、その時まだ生後2カ月でNICUに入院していた娘②から遁走を画策した私を止めてくれた。 物凄い間接的に 今は遥かカナダの地におられるあのゴールドメダリストが。 その節は当ありがとうございました あの時の鶴です そう言って

    羽生結弦君と私とおじさんの話|きなこ
  • 1