単なる「水の層」のせいではありませんでした。 中国の北京大学(PKU)で行われた研究により、氷が滑りやすい本当の理由が明らかになりました。 氷が滑りやすい理由について、私たちは長い間、圧力や摩擦によって表面に生成される水の層が原因だと信じてきました。 しかし近年では、氷の滑りやすさがそれらでは説明できないことが明らかになっています。 氷を滑りやすくしていたものの真の正体とは、いったい何だったのでしょうか? 研究内容の詳細は2024年5月22日に『Nature』にて発表されました。
金に銀や銅を混ぜて薄く引き伸ばした「金箔」は、仏像・工芸品の装飾として、また料理に振りかけるなどして用いられています。 この金箔は想像以上に薄く、その厚さは0.0001mmです。ただ、それでもこれは金原子500個分の厚さがあります。 しかしこの度、スウェーデンのリンショーピング大学(Linköping University)に所属する柏屋駿氏ら研究チームが、原子1個分の厚さしかない極限まで薄い金シートを作り、単離することに世界で初めて成功しました。 いわば「究極の金箔」とも言えるこの極薄の物質には、大きな可能性が秘められています。 研究の詳細は、2024年4月16日付の学術誌『Nature Synthesis』に掲載されました。 A single atom layer of gold – LiU researchers create goldene https://liu.se/en/ne
深海生物たちの個性的な造形には舌を巻くしかありません。 ここ数カ月で「深海の新種生物を大量発見した」というニュースが相次いで報告されてきました。 しかし、その勢いは全くとどまることを知らないようです。 米シュミット海洋研究所(SOI)はこのほど、チリ沖で行われた新たな深海探査で、新種と見られる「未知の生物」を一挙に50種ほど発見したと報じました。 今度はどんな奇怪な生物が見つかったのでしょうか? Scientists Find Pristine Ecosystems on High-Seas Seamounts https://schmidtocean.org/scientists-find-pristine-ecosystems-on-high-seas-seamounts/ Gallery: 50 new marine species found, including this uni
情報力学では情報は物理的な存在として扱われる研究では情報力学第2法則の普遍性が調べられました。 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部情報力学は情報の定量化や保存、伝達にかんする数学的な研究をもとにしており、第2法則では「宇宙で起こる現象は時間の経過とともに、情報エントロピーが維持されるか減少する」とされています。 一見すると難しい概念に思えますが、そんなことはありません。 まずエントロピーですが、エントロピーとは状態の無秩序さを数値化したものであり、大きな値であるほど、状態が混沌としていることを示します。 また情報力学における情報エントロピーは取り得る状態数、すなわち情報量に大きくかかわります。 つまり情報力学の第2法則をザックリと言い換えると「宇宙では時間経過とともに情報が圧縮されていく傾向にある」となります。 (※研究では従来のエントロピーを物理エントロピーとし、情報エン
久しぶりに散歩したら、去年はススキ野原だった空き地や河川敷が、セイタカアワダチソウばかりになっていた。そんな光景を見かけたことはないでしょうか? 「セイタカアワダチソウ」は、すっかり日本の風景に溶け込んいますが、北アメリカ原産の侵略的外来種に分類されます。 実はセイタカアワダチソウは根から他の植物の成長を阻害する毒を出しており、それによってススキなどの在来種を駆逐して繁殖しているのです。 しかし、ススキの野原がセイタカアワダチソウに制圧されたあと、またしばらくするとススキの野に戻っているのを見かけたことはないでしょうか? 実はセイタカアワダチソウは恐ろしい繁殖戦術を持っている一方で、非常にドジっ子な一面があるのです。 今回はそんな散歩していてよく見かけるけど、意外と知らない植物「セイタカアワダチソウ」について解説します。
将来、人類が月で生活する時、もしかしたら月面には舗装された道路が作られているかもしれません。 しかもそれは想像以上に簡単に実現できる可能性があります。 月面は、簡単に舞い上がってしまう砂塵「レゴリス」で表面を覆われています。 ドイツ・アーレン大学(Aalen University)に所属するエンジニアのフアン・カルロス・ヒネス・パロマレス氏ら研究チームは、そのレゴリスを収束させた太陽光で溶かして固めそのままアスファルトのように利用してしまおうと考えました。 そして今回の実験では、月レゴリスの模倣物をレーザーで固いタイルへと変化させることに成功しています。 研究の詳細は、2023年10月12日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。 How to make roads on the Moon https://www.esa.int/Enabling_Support
おしっこを我慢すると、嘘がバレにくくなるようです。 嘘は真実を話すときより、多くのことに気を遣い自分の行動を抑制する必要があります。しかし、多くの人はこの行動を上手く制御することができず嘘がバレてしまいます。 認知学・心理学の分野では、自分の行動を抑制する際、ある自制心を必要とするタスクを実行すると、同時に行う別の自制心を必要とするタスクを助けるという「抑制波及効果」という現象が知られています。 そこでアメリカのクレモント大学のエリーゼ・フェン氏(Elise Fenn)ら研究チームは、参加者に水をたくさん飲んでもらい、おしっこを我慢しながら嘘をついてもらうという実験を行いました。 すると嘘をつくときの瞬きの増加や声の上擦りなどが減少し、より自信を持って話すことができるようになったというのです。 一風変わった研究ですが、これはバレたくない嘘をつく際に役に立つ知見かもしれません。 この研究は、
地球の長い歴史では、幾度となく地上の覇者たる種の入れ替えが起きてきました。 我々人類を含む哺乳類の繁栄もいずれ終わるときがします。しかし、それは一体いつなのでしょうか? 英国ブリストル大学の気候学者であるアレクサンダー・ファーンズワース博士らが行った、スーパーコンピューターのシミュレーションによると、約2億5000万年後に形成される超大陸では哺乳類が適応できないほど気温が高くなる可能性があるといいます。 よく知られている通り、地球上の大陸はプレートテクトニクスの活動によってゆっくりと移動しており、定期的に陸地の統合と離散が繰り返されています。 約3億年前、地球にはパンゲアという超大陸が形成されていましたが、その陸地は現在離散しています。そして約2億5000万年後、再び主要な大陸が一つに集まってパンゲア・ウルティマと呼ばれる超大陸が形成されると考えられています。 そのパンゲア・ウルティマには
技術の進歩とともに故人との関わり方も変わってきているのかもしれません。 急速な進歩を遂げているChatGPTのような大規模言語モデルの登場は、日記などの記録を元にして、話し方や考え方を再現した疑似人格とチャットで話すことを可能にしました。 画像や映像を合成できるジェネレーティブAIは、実際の人物の映像を元に存在しない表情や仕草の映像を作り出すことを可能にします。 そしてこれらの技術の組み合わせは、亡くなった家族や友人をまるで画面の中では生きているように蘇らせることを可能にしているのです。 AIを使って故人をデジタル上で蘇らせる技術は「デジタルネクロマンシー」とも呼ばれ、最近では一般の人々もこれらの技術に簡単に触れられるようになってきました。 日本では「故人AI」や「バーチャル故人」などとも呼ばれて注目を集めており、海外では実際に「故人と会話できるAI」と謳ったサービスも登場してきています。
イギリス料理をまずくした元凶は農業革命脱穀機、農業革命のときは大活躍した。 / credit:wikipediaイギリス料理をまずくした原因としては、農業の世界にも資本主義を取り入れた農業革命が訪れた点が挙げられます。 農業革命は産業革命とセットで起きた変化です。 産業革命により、都市では職人の代わりに工場で製品が大量生産されるようになりました。 これにより多くの労働者が必要となり、都市部の人口が増加します。都市人口の増加は、食料需要を高め、農村ではより効率的な農業生産が求められるようになります。 こうした流れの中で起きたのが農業革命です。 農業革命によって農村は食料の自給自足をやめ、必要な食料は輸入に頼り、商品として特化した農作物の生産を始めるようになります。 土地は農業経営者のものとなり、農村の共有地がなくなって立ち入りが違法とされ、木の実や鳥を捕まえることも窃盗罪に問われるようになっ
筋トレと聞くと、ダンベルを持って肘を曲げる収縮運動がよくイメージされますが、実は肘を曲げた状態からゆっくりと伸ばす伸長運動の方が負荷が大きく、効率的に筋力を増大できることが分かっています。 そして今回、豪エディスコーワン大学(ECU)と新潟医療福祉大学の最新研究により、伸長運動は1回3秒を週に3日行うだけで顕著な効果が得られることが判明したのです。 筋トレに必要な時間は1カ月でわずか約36秒、両腕を合わせても約72秒で済む計算になります。 研究の詳細は、2023年7月28日付で科学雑誌『European Journal of Applied Physiology』に掲載されました。 Shortest Workout Ever: 3 Seconds of Exercise 3 Times a Week Grows Muscle https://www.sciencealert.com/sho
滑り台で重い物体の方が速く滑る!?ローラー滑り台は子供の頃より大人になってから滑る方が速度が出て怖い? / Credit:藤尾山公園ローラー滑り台 HD(You Tube)山の行楽地に出掛けるとよく見かけるローラー形式の滑り台。 この遊具を大人になってから滑ったとき、子供の頃より速度が出て怖いと感じたことは無いでしょうか? もしくは子供を先に滑らせて、後から自分が滑ったとき、子供に追いついてぶつかってしまったという経験を持つ人もいるかもしれません。 実際、今回の研究者である村田教授がそうした経験をしたといいます。 確かに筆者も甥と滑り台で遊んでいて、同じ経験をしました。 こうした現象についてほとんどの人は、体重が重くなれば速く滑るのは直感的になにも不思議なことではないと思うかもしれません。 しかし、先にも述べた通り、実際には丸めたティッシュとスマホをベッドに落とせば同時に布団に着地します。
ヒトの生物学的な性別は「手の匂い」だけで正確に見分けられることが米フロリダ国際大学(FIU)の研究により明らかになりました。 本研究では、手の匂いに含まれる「揮発性有機化合物(VOC)」の分析により、約96%の精度で男女の識別に成功したとのこと。 この斬新なアプローチは主に犯罪現場での応用を想定しています。 DNAや指紋などの痕跡と並んで、法医学的捜査を助ける貴重な情報源となるかもしれません。 研究の詳細は、2023年7月5日付で科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。 Research finds sex can be confirmed by hand odor https://news.fiu.edu/2023/research-finds-sex-can-be-confirmed-by-hand-odor Hand odor can reveal a person’s se
世界終末が迫っても多くの人類は道徳を放棄しない世界終末が迫っても多くの人類は道徳を放棄しない / Credit:Canva . ナゾロジー編集部もし明日世界が終わるとしたら、貴方はどのように過ごすでしょうか? 野蛮な殺し合いや略奪に興じるでしょうか? 溜め込んだ財産をすべて使い切って豪遊するでしょうか? 大切な誰かと静かに最期のときを過ごすのでしょうか? 「世界が終わる時、人間はどのように振る舞うのか?」この問題は、何世紀にもわたって哲学の重要な話題になってきました。 行動に対する罰もなく、未来もない状況でも人々は最後まで道徳を維持するのか、これは幾度となく議論が交わされてきた問題です。 しかし残念なことに、実際に何が起こるかは世界終末が訪れないとわかりません。 そこで今回、ニューヨーク州立大学の研究者たちは、MMORPGという小さなゲーム世界の終焉を分析し、参考とすることを思いつきました
日本も例外ではないようです。 米国のコロラド大学ボルダー校(CU-Boulder)で行われた研究によって、世界各地に存在する1972個の主要な湖を30年に渡り観測したところ、全体の53%にあたる湖において水量が減少していることが示されました。 また水量が減少した湖は乾燥地帯や人口過密地帯だけでなく雨が多い湿潤な地域や寒冷な高緯度地域でも起きていました。 これまでアラル海やカスピ海、死海などで水量が減少している様子がたびたび報告されていましたが、今回の研究により「湖の水量減少」は全地球レベルで起こっている現象であることが示されました。 このままのペースで乾燥化が続いた場合、地球全域で水を求める争いが激化する可能性があります。 なぜ陸地の水は失われつつあるのでしょうか? 研究内容の詳細は2023年5月18日に『Science』にて公開されました。
動物園のゾウは私たちの来園を心待ちにしているようです。 英ノッティンガム・トレント大学(NTU)、ハーパーアダムス大学(HAU)の研究チームは昨年、コロナのロックダウン中に動物園の霊長類が人が来ないことで元気を失くし、食事量が減って孤独な時間が増えていることを発見していました。 そこで今回は霊長類以外の動物250種以上を対象に、来園者の存在が彼らにどんな影響を与えるかを調査。 その結果、ゾウは来園者が来ることで食事量や仲間とのコミュニケーションが増え、さらに退屈さの証拠である「繰り返し行動」が減少することが分かったのです。 人がいない静かな動物園より、大勢の人で賑わっている動物園の方がゾウもテンションが上がるのかもしれません。 研究の詳細は、2023年3月28日付で科学雑誌『Animals』に掲載されています。
生命進化を再現できました。 米国のジョージア工科大学(Georgia Tech)で行われた研究により、3000世代かけて元は単細胞生物である「酵母」を目に見える多細胞生物へ人工的に進化させることに成功しました。 進化した酵母たちの体は最初の2万倍以上(直径1mm以上)となってショウジョウバエに匹敵する大きさとなり、物理的強度は1万倍も強化され、多細胞生命体としてやっていくための条件を備えていることが示されました。 酵母たちはいったいどんな進化で巨大な体と頑強さを身につけたたのでしょうか? 研究内容の詳細は2023年5月10日に『Nature』に掲載されました。 A Journey to the Origins of Multicellular Life: Long-Term Experimental Evolution in the Lab https://research.gatech.
地球の運命を映し出すかのような天体が発見されました。 米マサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア工科大学(Caltech)はこのほど、約1万2000光年にある恒星「ZTF SLRN-2020」が、その近くを公転する惑星を飲み込む瞬間の観測に成功したと発表。 恒星に飲み込まれた惑星の観測は世界で初めてのことです。 これは約50億年後に地球がたどる姿を示すものとして注目を集めています。 研究の詳細は、2023年5月3日付で科学雑誌『Nature』に掲載されました。 For the first time, astrophysicists have caught a star eating a planet https://www.sciencenews.org/article/first-time-astrophysicists-star-eating-planet Astronome
揚げ物の食べ過ぎが、肥満や高血圧、心臓病のリスクを高めることはよく知られています。 しかし悪影響が及ぶのは身体の健康だけではないかもしれません。 中国・浙江大学はこのほど、14万人以上を11年にわたり追跡した大規模調査から、揚げ物の食べ過ぎが不安やうつ症状のリスクを増大させることを発見しました。 中でもフライドポテトをよく食べていた人ほど、うつ病の発症リスクが高くなっていたという。 一体、揚げ物の何が心にダメージを与えているのでしょうか? 研究の詳細は、2023年4月24日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。 Frequent fried food consumption linked to anxiety and depression https://medicalxpress.com/news/2023-04-frequent-fried-food-consumption-li
虫が光に引き寄せられる理由がついに判明!虫が光に引き寄せられる理由がついに判明! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部多くの人々にとって、街灯や勉強机の明かりに虫たちが集まっている風景は身近なものでしょう。 夏場のコンビニの軒先など設置されている害虫駆除装置も光に誘引される虫たちの性質を利用したものであり、近づいてくる虫たちに「バチッ」という音とともに電撃を与え感電死させるものとなっています。 ただなぜ虫たちが光に集まるのか、その根源的な理由については謎となっていました。 たとえば有名な4つの仮説(①~④)をみてみると ①「虫には光に向かって飛ぶ走性があるとする説」に対しては先に述べた通り、そもそも虫には近場の光源に直接向かうような行動がほとんどみられず多くは垂直に直交するような飛び方をします。 ②「月の光を頼りに航行してるところを人工光源によって混乱したとする説」は長らく最
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