樋口尚文『黒澤明の映画術』(1999年、筑摩書房)は、黒澤明の映画の技法についてのみ的を絞った本で、その中では「アクション」「マルチカメラと望遠レンズ」にはじまり、「音楽」「音響」で終止する各種の演出が語られます。 作品評・役者評はまったくなくて、黒澤明がどのように映画を撮ったか、というだけの話。 こういうのはビデオ時代(何度も同じ映画の同じシークエンスを勉強のために見ることができるようになった時代)以降じゃないと難しい。 特に黒澤明の映画はわかりやすくて面白すぎるため、自分でも見ていてあまり勉強になりません。 一般的に、黒澤明の映画は昔から勉強のためになんか見られてなかったと思う。 たとえば「ワイプ」の章、『野良犬』(1949年)では、刑事が女スリを追いかける場面では9回のワイプ、『生きる』(1952年)では役所のたらい回しの場面では16回のワイプが使われてる、なんて、映画館で見ているだ