書評 秦郁彦『慰安婦と戦場の性』(新潮選書、1999) 宋 連玉 Song,Younok はじめに 『慰安婦と戦場の性』は、著者の秦郁彦氏によると「第二次大戦期のアジアばかりでなく、古代から現代に至るタテ軸と洋の東西にわたるヨコ軸を交差させての「慰安婦百科全書」をめざした」ものらしいが、慰安婦問題が日韓の政治・外交の懸案事項となっているおかげも被って16年たった今でも版を重ねている。 帯文や表紙、あとがきといった目につきやすいところに踊るのは、この問題に関心を寄せる人々のイメージを操るような派手なキャッチコピーである。1999年版の表紙カバーには「慰安婦問題は嫌煙権論争に似ている。知的アプローチよりも情緒論、政治的思惑が先行して過熱気味の論争は今も続く」とあり、あとがきには、慰安婦問題が「突如として内外の耳目を衝動する大トピックに浮上した理由」として「この疑問に答える材料を私は持ち合わせて