「大先輩にそんなことをして失礼ではないですか」。私が助教授だった時、10歳年上の教授に呼ばれ、叱られた。ちょうど40歳の時で、ようやく自分の仕事に自信を持てるようになったと思い始めた矢先だった。 18歳で東大に入学して一番驚いたのは、「世の中には優秀な人がたくさんいる」ということだった。以来、人の2倍3倍勉強して、負けないようにしようと思っていた。まじめな努力以外に、彼らに勝てるすべがないと思ったのだ。社会人になっても同じ気持ちだった。 そうして卒業後16年が経って、40歳になり、ふと振り返った時、生まれて初めて、私も少し偉くなったのかなと思った。船の形の設計と波のコンピューターサイエンスの研究分野では、ほとんど世界の頂点にいた。高速船のような新システム開発でも実績を上げつつあった。 大先輩に向かって偉そうに助言する その頃に始まった国家プロジェクトが、テクノスーパーライナーの開発である。