物事の現状を観測したり、過去の出来事を調査したりする場合、ある状態の出現や発生の頻度が問題になることがある。そして、頻度が高いものは、より注意深く、観測や調査が行われる。 それでは、頻度を定量的に表すにはどうすればいいだろうか。通常は、「割合」、「比」、「率」のいずれかが用いられる。これらの概念は、日常生活の中で自然に使われているもので、お互いによく似ている。それぞれの意味やニュアンスの違いを、あまり意識せずに使われることもあるかもしれない。 しかし、病気の発生原因を解き明かすことを目的とする疫学では、概念を正確に理解することが必要とされる。「割合」と「比」と「率」を混同すると、疾病の頻度を測定する基準が揺らいでしまうためだ。以下、疫学で用いられるそれぞれの概念を、簡単にみていこう。 「割合 (proportion)」 全体のなかで、ある特定の特徴をもつものが占める部分の大きさをいう。分子