時の進行と光が緻密な関係を結ぶアピチャッポン・ウィーラセタクンの映像作品は、夢、家族の物語、抑圧された心理や抵抗の歴史などさま ざまな記憶を読み込みながら、長い眠りの果てに映る深層のイメージとなって立ち現れます。スクリーンに拡張した時間をさまよう亡霊は、 政治に翻弄される生の領域を横断し、闇と忘却、光と記憶の関係性のうちに強く刻印されていきます。 《メモリア》(2017年)は、ウィーラセタクンが母国タイを離れて制作した初の主要プロジェクトで、一連の写真や映像によって構成されています。タイのジャングル物語のルーツとなるアマゾンに親近感をもっていた彼は、南米の探索をはじめ、コロンビアを舞台にした映画製作に着手します。その中で、活発な火山や地すべりが絶え間なく自然の景観を変えるコロンビアの地形とそのトポロジーに惹かれていきます。新作映画では、主人公は幻聴と幻覚がむすびつく共感覚の一種を経験します