『ジュピター』観賞。 ウォシャウスキー姉弟による新作。 地球は、実は高度に発達した異星人の“農場”で、人間は栽培されていた。その地球でロシア移民のててなし子として生まれた娘、ジュピターが実は異星人の皇族と全く同じDNAを持っていることが判明。異星の権力争いに巻き込まれる。という話。 「高度な存在に栽培されていた人間」という設定や、親戚のおじさんの元で家政婦をして暮らすジュピターが「こんな生活もうイヤだ!」と愚痴を言っていたら、あれよあれよと異星の皇族だったとなる展開は『マトリックス』そのままである。 そもそも『マトリックス』によって切り開かれた「実はアナタは、今のアナタとは違う重要で大事な存在だった!」という、『ハリー・ポッター』や『トワイライト』に代表される、子供の現実逃避小説ジャンルに、大遅刻して来た感のある話だ。 本作で『マトリックス』におけるカンフー・ファイトに相当するのが、チャニ
デヴィッド・フィンチャー最新作『ゴーン・ガール』。自分もエントリーを上げたが、多くの人もまた大きく心動かされてエントリーを上げている。内容的には理解出来ないような物ではないが、一筋縄ではいかないキャラクターや展開に韜晦させられている人も多い。 また、フィンチャー過去作との比較をしているものもあったのだが、奇をてらった解釈が流行りなのか、首をかしげざるをえないものも少なからずある。そこで、フィンチャー作をデビューから最新作まで俯瞰して、ごくごく一般的なデヴィッド・フィンチャー作品の解釈・テーマの読み解きをしようと思う。 失敗したデビュー 『エイリアン3』(1992) ●「体内のヘビ」よもう一度 エッジの効いたPVを作るフィンチャーならMTV感覚のクールな映画を作るだろうと監督起用されたが、待っていたのはスタジオの過度な介入と、いくつもの案をツギハギにした歪な脚本。誰がやっても暗澹たる結果にな
「これはオレの愛だ!」 客席に豚の頭や内臓をぶちまけたザ・スターリンのボーカル遠藤ミチロウが抗議に来た客に言い返した言葉だそうだ。 かえすがえすもクェンティン・タランティーノ/QTの登場は映画史において重要だった。そう思わされるのは、センスの無いジャンル映画風のタイトルバックや、画面にそぐわないのも構わずに混入される70’sソウルやバブルガム・ポップを聞いた時、深いため息と共にだ。 一般的に「QTらしい」「QTっぽい」と言った場合、単なる懐古主義だったり下品なジャンルものを愛でるような人々を、かなり大雑把に指す表現として機能している。 もちろんQTは古い映画に造詣が深いし、その中にはポルノやホラーといった多くの人に敬遠される下品な作品も多い。ただ、同様に新しい映画も好きだし、上品とされる作品も好んでいる。つまり「QTらしい」といった言葉を正確に定義するなら「恐ろしいほど映画好きがしそうな感
『アクト・オブ・キリング』鑑賞。 このあいだの都知事選で田母神を応援するデヴィ夫人を見た。「彼こそラスト・サムライです!」というお馴染みの文句を咆哮していた。ただ、なにぶん周囲を取り囲む品を欠いた連中と一緒だと思われてはかなわないし、耳が腐って落ちるような妄言を聞いてやる程度のヒマもなく、眼ヤニをほじるなどの「田母神の演説を聞く」よりも重要な雑事をこなすため、その場は後にした。 彼女の狂った言動に奇妙な違和感を持つ人は多いだろう。右翼団体フィクサー児玉誉士夫に、愛人としてスカルノ大統領の元へ送りこまれる。後に一夫多妻制の第三婦人として結婚するも、1965年の軍事クーデターにより立場を追われる。さらに、そんな境遇にあっても日本大使館から亡命許可は下りず終い*1。ことごとく「右翼」「日本」に裏切られ続けた経緯がある。その彼女が何故、田母神などという、それまで彼女を裏切り続けた側に与するチンピラ
『ゼロ・グラビティ』鑑賞。 「絶叫マシン」が好きだ。猛スピードで道路脇を駆ける後楽園。民家の隙間を抜ける浅草花やしき。広大な自然の中で上下左右も解らなくなるほど振り回される富士急ハイランド。もちろんディズニー・ランドのスペースマウンテンやビッグサンダーマウンテンの完成された箱庭を抜ける楽しさは別格だ。 しかし、フリーフォール系だけはどうにも苦手だ。塔にくくりつけられた座席がてっぺんまで引き上げられ、落下。ジェット・コースターが「スピード」の娯楽だとすればフリーフォールは単純に「死の疑似体験」だ。 文学や絵画など多くのジャンルで「死の疑似体験」もしくは「死」そのものと向き合うものは存在する。もちろん映画にも「死の疑似体験」を娯楽にした作品は多い。ホラー映画、サスペンス映画など、殺されるかもしれない恐怖にさらされた人を見て感情移入し、死を考え恐怖する。そして、今の生(せい)を実感する。 メメン
リメイク版『キャリー』日本公開版のレイティングがPG12になっています。アメリカでの公開時のレイティングはR(R15)です。日本とアメリカではレイティングの基準が違うので日本の一般公開で上映されるものと、アメリカで公開されたもので違いがあるのか、ツイッターの公式に聞いてみました。 3回。 全部無視です。 ちなみに『飛びだす 悪魔のいけにえ3D』に同様の質問をした時には、即答で 映画『飛びだす 悪魔のいけにえ』 @ikenie_mov6月18日 全くもって、してないけにえ。純度100パーです。よろしくいけにえ“@samurai_kung_fu: 『飛び出す 悪魔のいけにえ』公式 @ikenie_mov さんに質問です。本編映像にボカシ処理など日本公開に際しての画像処理は行われていますか?” と、返事をいただきました。100点満点の120点の回答です。この質問のあとで知ったのですが『飛びだす
『アフター・アース』鑑賞。 M・ナイト・シャマラン監督の新作で、主演はウィルとジェイデンのスミス親子。 多くのシャマラン映画は、他の映画作家があまりやらないことにチャレンジしていました。なので、あまり「成功」の前例が知られていなかったり無かったりで、出来あがった映画が成功しているのか? 失敗しているのか? が、一般的な価値判断基準では図りづらいものでした。なので、保守的な多くの人にとって「知らないもの=異物」に映り、恐怖した結果「クソだ!」という謂れのない糾弾を受けている。というのがシャマラニアンたる私の目から見た「シャマランの一般的な捉えられ方」です。 ラジー賞なんてのは本当にセンスの無いバカなアメリカ人の象徴のようなもので、ジョックスのいじめと同じ程度の意味合いしか持ちません。しかし、ひとたびメディアに乗ってしまうと根拠のない権威を纏ってしまい、あたかもそれが「世論である」という間違っ
ボクは『フライト』をとても面白く鑑賞したのですが、「つまらない!」という意見に「あれ?そうだったかな?」と面白くみた自分を疑いだしたので自分メモシリーズを書きます。ネタばれしてます。 アルコールとドラッグがもたらす恐怖が…… ない? 本作では主人公ウィップがアルコール中毒でコカイン常用者である事が重要なファクトとなっています。しかし、それらはあくまで象徴です。実際、劇中で、ウィップは大酒をくらいコカインをキメながらも、墜落必須の飛行機を奇跡的な機転とテクニックによって救っています。車を運転しながら大五郎の巨大なペットボトルみたいなウォッカの大瓶をぐびぐびラッパ呑みしても事故は起こしません。でろでろに酔っ払っても表立った場所へはコカインでしゃっきりしてから出ていきます。 飲酒シーンは大量にありますが「アルコール中毒やドラッグ服用による」恐怖や弊害は描かれていません。せいぜいが恋人を口汚く罵る
『フライト』鑑賞。 ホテルの一室、並ぶカラの酒瓶、全裸のラテン美女、白いライン……本作はそんな怠惰を絵に書いたような風景で始まります。タイトルの『フライト』が意味するのは、パイロットである主人公ウィップ・ウィトカーが見まわれる飛行機事故の「フライト」であり、常用するコカインでシャッキリポンと飛びあがるように高揚する「フライト」、山積する問題から目をそむけて酒飲んで現実逃避の“高飛び”を意味する「フライト」でもあります。 本作は飛行機の故障による事故を神業のようなテクニックで最小限に食い止めたパイロットが、その事故調査により自身の飲酒癖、ドラッグ常用を見つめ直すという話です。 キリスト教に限らず宗教は道徳的な側面を持っています。慎ましく品行方正に生きていれば心やすらかに生活出来て、死んだら天国で永遠にほがらかに生活できますよ!と。対して悪魔は徹底して現世利益を追求し、瞬間の幸せのため後先なん
『ジャッジ・ドレッド』鑑賞。 原作はイギリスのコミックです。日本では20年以上10年くらい前に一度、バットマンとのクロスオーバー作が翻訳されているだけ*1で、あまり馴染みの無いキャラクターです。アンスラックスの「ジャッジ・ドレッド」をテーマにした曲「I am the Low」でスラッシュ・メタルファンには知られていると思います。 一番有名なのが95年にシルベスター・スタローン主演で作られた映画版でしょう。当時のスタローンといえば『デモリション・マン』だろうが『スペシャリスト』だろうが口ひんまげて半裸でウェーウェー言ってるだけ*2なので、「ジャッジ・ドレッド」原作に思い入れのある人には大変不評だそうです。 ボクは原作の方は上記したバットマンとのクロスオーバーもの、DCの馬鹿キャラ「ロボ」とのクロスオーバーものを洋書で読んでいたくらいで、あまりよく解ってません。原作では、ドレッドは絶対に顔を見
町山智浩さんのツイートでタランティーノの新しい彼女のHPが紹介されていました。 http://www.liannespiderbaby.com/ リアン・スパイダーベイビーさん。ファンゴリア誌、フェイマス・モンスターズ誌などでライターを務める方のようです。名前の由来はパム・グリア主演『コフィー』や『残酷女刑務所』の監督、ジャック・ヒルのデビュー作『スパイダー・ベイビー』からです。歳をとるごとにバカになり、人を喰いはじめる呪われた家族の恐怖を描いた映画です。*1さすが、QTの彼女になるほどの人物。わかってらっしゃる! 彼女の素性を知って、ボクが最初にイメージしたのは『桐島、部活やめるってよ』で橋本愛が演じた「かすみ」だ。 『桐島〜』を見た多くの(主に)映画秘宝読者たちが「橋本愛!けっきょくコッチ側の人間じゃないんだ!裏切られた!」と悲鳴をあげています。『鉄男』の特集上映に女の子独りで駆けつけ
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