大森の駅から歩いてすぐ、「天下一煮込」の看板が目印の蔦八は、当地で38年続く煮込み屋だ。15席程度のカウンターの向こうに大鍋があり、グツグツと煮込みが湯気を上げている。味は醤油味。卵入りのもつ煮込みは、味がしみていて、甘すぎず辛すぎず、絶妙の味加減だ。通は豆腐の煮込みを頼み、汁をかけてもらう。これもまた絶品である。 カウンターの目の前には、細い棒が立っていて、プラスチックの丸いコインがささっている。これは値段ごとに色分けされていて、注文をするごとに増えていく。自分がどれだけ飲んだか、食べたか、お店にも周りにもわかる仕組みである。 煮込みの鍋をあずかる大将は、御年72歳。昭和45年に脱サラでこの店を始めた。それ以来、汁をつぎ足しながら作ってきた煮込みには、38年間の店の歴史がこめられている。煮込み以外の料理は、すべて奥さんの手作りだ。青柳のぬたと、小松菜のごま和えをたのむ。どちらも味が濃すぎ