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ブックマーク / katos.blog40.fc2.com (8)

  • 旅する読書日記 マルクスの使いみち

    Amazonマイストア 鈴木先生 3 越境の時 イッツ・オンリー・トーク 沖で待つ 星新一:一〇〇一話をつくった人 表現のための実践ロイヤル英文法 知識の哲学 ロボットの心 猛スピードで母は デカルト―「われ思う」のは誰か これが現象学だ 縷々日記 その名にちなんで 停電の夜に 四十を超えてからじわじわと老眼っぽくなってきて、電車の中でを持つ手が日に日に顔から遠ざかる。混んだ車内でを顔にくっつけるようにして広げるという芸当はもうできない。  そんな苦難とたたかいながら読んだ書『マルクスの使いみち』(稲葉振一郎・松尾匡・吉原直毅著、太田出版)は、分析的マルクス主義(アナリティカル・マルキシズム)に立つ現代経済学がめざすもの、また新古典派経済学とそれとの関係について大まかに状況を知るには非常に役立つ良いである。とはいえ、最低限、大

  • 旅する読書日記 中世哲学への招待

    中世哲学への招待―「ヨーロッパ的思考」のはじまりを知るために (平凡社新書) 平凡社 2000-12 売り上げランキング : 290729 Amazonで詳しく見る by G-Tools  めちゃくちゃ面白かった。題名は『中世哲学』と大きく謳っているが、中身は「このもの性」または「個体性」の概念を切り開いた中世ヨーロッパの哲学者ヨハネス・ドゥンス・スコトゥスの議論の紹介にかぎられている。しかしここに「ヨーロッパ的思考」のはじまりがあるのだという著者の断定が、ぐいぐい迫力をもって迫ってくる。  個物の個別性の起源をめぐって、トマス・アクィナスはアリストテレス以来の思考を踏襲し、それを質料的なものだという。このとき、個物の質(実体)が形相起源であることには何ら異論はない。これに対して、個物の個別性の起源が質料にあるということには微妙な問題がある。単なる物体とはちがって、「人間のような半分精神

  • 旅する読書日記 魯迅とブレードランナー

    先日、NHKの『10ミニッツ・ボックス』という教育番組で、魯迅の「故郷」を紹介していた。教科書にも載っている超有名作だというのだが、じつは僕はこの作品のことを覚えていなかった。岩波文庫の竹内好訳『阿Q正伝・狂人日記(吶喊)』は若い頃に読み、「狂人日記」や「阿Q正伝」の強烈な印象はいまも残っている。たとえば「狂人日記」で、語り手が中国のさまざまな文献を読むと、それらすべての字間に「人」という文字が隠されているのが立ち上ってきたというあの不快きわまるイメージなどだ。同じく岩波文庫の『魯迅評論集』も拾い読みして、遺言とされる「死」というエッセイの苦々しさが気に入った。でも「故郷」にはまるで印象がない。たぶん、読み飛ばしていたのだろう。  そんなわけで、藤井省三による新訳版の『故郷/阿Q正伝』を読んだ。「故郷」は、僕以外のたいていの人は知っているのだろうが、いまは都会に住む語り手が幼い頃住んでい

  • 旅する読書日記 分類思考の世界

    分類思考の世界 (講談社現代新書) 講談社 2009-09-17 売り上げランキング : 9417 Amazonで詳しく見る by G-Tools  こいつはとびきり愉しい(←ちょっとオヤジ臭い表現ですが)快著。分類学や生物学一般に興味のある人はもちろん、そうでなくても「分類」という現象――たとえば「男」と「女」の!――を、ほんのちょっとでも「不思議だなあ」と思ったことのある人はぜひ読むべし。「種」とは何かをめぐるこれまでの議論を跡づけつつ、考察の焦点はより普遍的な「分類という作業そのもの」におかれていて、マイアやギゼリンといった生物学プロパーの議論だけでなく、ウィギンズの存在論やギンズブルグの歴史認識論なども紹介される。著者は種――だけでなく通常の意味での個体も――の実体視を強く否定し、それに類する疑いのあるシステム論もほとんど相手にしない。実在するものはせいぜい「生命の樹」全体だけであ

  • 旅する読書日記 第二の性

    『第二の性』をぼんやり読み返していたら、こんなフレーズがあった。  多くの男の子はつらい自立を強いられることに怖気づき、そういうことなら女の子になる方がいいと思う。(『決定版 第二の性 Ⅱ体験(上)』新潮文庫、17ページ)。  今朝の新聞に出ていた雑誌『SAPIO』の「女尊男卑」特集なんかが典型例だが、セクシズムに関して短絡的に「逆差別」という言葉をもちだすたぐいの連中は、要するに上のボーヴォワールの命題を相も変わらずベタに反復しているだけであろう。もっとも、重要な違いもある。ボーヴォワールが語っているのは三歳児のことであって、『SAPIO』の読者層であろう二十代、三十代の男ではない、ということもあるが、そのことではない。男であることがイヤで、気で「女の子になる」のならいいのだ。誰にも非難されるいわれはない。そうではなくて、男としての見栄や既得権益は保持したまま、女の方が得している云々と

  • 旅する読書日記

    今は亡き『へるめす』という岩波の雑誌に書いた藤子・F・不二雄氏の追悼文をひょんなことで発掘した。掲載されたのは1997年3月号、書いたのは、ファイルのタイムスタンプによると、その前年の12月らしい。ちょうど12年前、まだUCバークレーではなくコロンビア大学にvisitingで行こうと思っていた頃だ。いかにも若書きというか、よくわけのわからない怒りに駆られて書き殴った文章だが、になることもありえないと思うので、せっかくだからここに載せておく。  ジョン・レノンが狂人に殺されたとき、オノ・ヨーコが日の新聞の一面全部を買い取って発信したステートメントのなかに、ジョンの死について書くことで日銭を稼ぐ人々を責めはしない、という趣旨の一節があった。それを読んだときの穏やかな感動に忠実であろうとすれば、つい最近亡くなったひとりのマンガ家にかこつけて撒き散らされたみすぼらしい言葉どもに対しても、静かに

    namawakari
    namawakari 2009/02/02
    確かに若書きという印象、特に後半が。でも熱さは伝わる。/トキワ荘世代って結構な闇を抱えてるなあと思う。
  • 旅する読書日記 野生の思考、悲しき熱帯

    野生の思考 大橋 保夫 みすず書房 1976-01-01 売り上げランキング : 54935 Amazonで詳しく見る by G-Tools  明学の大学院にはM1対象の「基礎演習」という授業があり、今年は春秋とも僕が担当している。基的には古典、準古典の著作をかいつまんで輪読するというスタイルがほぼ確立している。この秋は、春から持ち越したフロイトを少しやってから、クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』からいくつかの章を読んだ。大著『親族の基構造』と『神話論理』とをつなぐ著作で、神話分析への一里塚。ほんとうは通読して初めて面白みと凄みがわかるのなのだが、時間の枠があるので仕方がない。含蓄の深い時間論が展開される最終章「再び見出された時」まではたどり着けなかった。  『野生の思考』には、『親族の基構造』のような緻密さ、スマートさはない。それは大部分が対象のちがい(親族構造と神話)か

    namawakari
    namawakari 2008/12/21
    「20世紀最高の名著というよりは、19世紀最後の名著という趣がある」
  • 旅する読書日記 良い死

    良い死 立岩 真也 筑摩書房 2008-09 売り上げランキング : 54890 Amazonで詳しく見る by G-Tools  この10月、共同通信のために書いた立岩真也『良い死』の短い書評を転載します。いくつかの新聞に配信されたはずですが、確認はしていません。  重度の障害や難病とともに生きる人たちの傍らで、望ましい社会のあり方を粘り強く模索してきた社会学者による、「尊厳死」に対する透徹した批判の書である。   誰かがひどい苦痛にさいなまれながら生きているとき、周囲の人間がなすべきは、その人の苦痛をできるだけ軽減し、より健やかに生きられるよう助力することであるはずだ。それはむしろありふれた常識ではないか。だが全く反対のベクトルをもつ主張、すなわち「不治かつ末期」の病者に速やかな死を与えよとする「尊厳死」の思想が勢力を広げつつある。それは「自己決定」や「自然」といった、聞こえのよい修辞

    namawakari
    namawakari 2008/12/14
    今のところ尊厳死賛成派なので、読んでみたい。
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