ふと書架で見つけて読み直して、血の気が引いていく。 中川先生は、『日本の都市下層』(1985)を読んで以来、私の憧れの人である。また中川先生を最後の王としていただく(最後の女王は岩田正美先生)、高野岩三郎を太祖とする「家計調査―生活構造論/労働経済学」王朝も、私にとって「オルタナティブな社会学」として憧れの学問である。 前に記した「学会官僚」として、日本社会学会大会のプログラム作成にたずさわっていたとき、委員長の倉沢進先生が、いつものいたずらっ子のような笑みを浮かべて、「中筋君の部会の司会は高橋勇悦さんがいいかな、中川清さんがいいかな」と聞いてくださった。私もはじめての学会発表をエントリーしていたのである。私は即座に「中川先生でお願いします」と叫んだ。高橋先生のことはまだ論文でしか知らず、コミュニタリアンの先生が私の野心を理解してくださるとは思えなかったこともあった。でも、中川先生にお会い