本をテーマにしたエッセイや随筆、本棚を紹介する本を漁ってみると、僕が知らないだけで、実は「床抜け」はそんなに珍しいことではなく、起こりうるということを思い知った。それどころか床が抜けなくても、本が大量にあるというだけで十分大変だということも、嫌というほどに理解した。 本との格闘 その中から故・草森紳一のケースを紹介してみたい。著書の『随筆 本が崩れる』(文春新書)には次のようなことが書いてあった。 ドドッと、本の崩れる音がする。首をすくめると、またドドッと崩れる音。一ヶ所が崩れると、あちこち連鎖反応してぶつかり合い、積んである本が四散する。と、またドドッ。耳を塞ぎたくなる。あいつら、俺をあざ笑っているな、と思う。こいつは、また元へ戻すのに骨だぞ、と顔をしかめ、首をふる。 これは草森さんが風呂に入ろうとして本の山が崩れ、浴室に閉じ込められたときの様子である。彼の住む2DKの空間の中でまったく