「日本ホラー大賞短編賞」受賞の小説家・田辺青蛙によるオススメブックレビュー。 『家畜人ヤプー』という本の存在を知ったのはどこだろう。帯には「あるマゾヒストが夢想した もうひとつの日本、邪蛮。約40年前に描かれた禁断の書、復刊」とある。 日刊サイゾーの編集者さんから、この本のレビューを頼まれたとき、正直言ってちょっと戸惑いがあった。自分が自分でない異形のものになってしまう……。誰かの日常品に作り変えられてしまうとしたら。身の回りの物がもし、意思を持つ”人”に似た生き物だったとしたら……。 白人女性をフィアンセに持つ日本人の青年が、未来に連れて行かれる。そこで日本人は酷い扱いを受けていた。未来では白人は神、黒人は奴隷、日本人は家畜や道具同然だったのだ。家具や便器も異形の姿となった日本人であり、ペットも奇形として生み出された日本人。そんな世界を白人たちは自由気ままに生きている。やがて日本人の青年