シャープのエンジニアが驚いていた。今から20年ほど前、1995年前後のことだ。当時、同社はアップル社のPDA、Newton MessagePadシリーズの製造を請け負っていた。その2代目製品となるMessagePad 110に関わったエンジニアがこう言ったのだ。 「中を見ると、基板が四角形でなくバッテリーを囲むような複雑な形になっていたり、他にも何カ所かもっと簡単にできそうなところをあえて大変な構造にしていたりしてあったんですよ。それでアップルの人に聞いたら、持った時の重量バランスを考えてそうしたって言うんですよね」 このエンジニアが言うとおり、部品の配置に気を配って重量バランスをよくしたことで、Newton MessagePad 110は実際の重さよりも軽く感じられた。Lindyというコードネームで知られたこのMessagePad 110こそ、ジョナサン・アイブがアップルに入社しての初の
2004年に開始されたローカル情報の口コミサイト「Yelp(イェルプ)」。スマートフォンが登場する以前から存在したこのサービスは、2008年、米アップルのアプリ販売ストア「AppStore(アップストア)」の開始と同時にアプリが提供され、その後、爆発的に普及していった。同社は2012年3月にニューヨーク証券取引所に上場。現在では米国、カナダ、英国、ドイツ、スペイン、デンマーク、トルコ、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなど世界25カ国でサービスが提供されており、月間の訪問者数は1億2000万人。モバイルからの利用者数は月間で約1060万人に及ぶ。そして、4月9日からは26番目の国として日本でサービスを開始する。ジェレミー・ストップルマンCEO(最高経営責任者)に話を聞いた。 日本市場でサービスを開始しようと思った理由は。 昨年、日本に訪れた際、同行していた米セールスフ
「こ、これは……『艦これ』ですか?」 「えっ? あ、はい! そうです。あの、すみません。あなたは日本人…ですか?」 「ええ、そうですけれど…。これは自分で描いたものですか?」 「はい。自分で描きました。感激です…日本人…。恥ずかしいですが、よかったらこれ(イラスト集とクリアファイルを差し出して)、記念に持って帰ってください!」 中国・南京でアニメやゲームの同人イベントが開かれると聞き、足を運んでみた。 会場に足を踏み入れてみると、100以上のブースが置かれ、10代後半から20代半ばと思われる中国の若者たちが自分で書いたイラスト集やクリアファイル、缶バッジ、メモ帳、ノート、ボールペン、キーホルダー、紙袋などを販売していた。その中に上記の男子大学生(21歳)もいて、私に商品(会場でのお値段は60元=約1000円)をプレゼントしてくれた。 中国には日本のアニメを見て日本好きになった若者が大勢いる
川島:石井先生は、マサチューセッツ工科大学(MIT=Massachusetts Institute of Technology)のメディアラボ(MEDIA LAB)にいらっしゃいますよね。この連載は「ダサい社長が日本をつぶす!」というタイトルなんです。日本の企業が作っている製品やサービスのデザインが、かっこよくなくなってきている。それはなぜなのか、どうしたらもっとかっこよくなるのかということについて、さまざまな方にインタビューしているものです。 石井:「ダサい社長が日本をつぶす!」。凄いタイトルですね。 大前提が間違っている 川島:日本人デザイナーの中には、アウディの和田智さん、ピニンファリーナの奥山清行さん、アップルの西堀晋さんなど、海外の一流企業に籍を置いて活躍してきたデザイナーがいる。石井さんもMITのメディアラボで副所長として、またメディア・アート&サイエンスの教授として、ハイレベ
また1つ、大切な店が消えた。 連絡が来たとき、街は既に夕暮れ時を迎えていた。「今日中に出て行けと言われた」。都内某所にある行きつけのビストロの主人から、そうメールが入った。メディアにもたびたび登場し、ファンも多い人気店だ。10年近くの間、競争の激しい一等地で営業を続けてきた。 経営が赤字だったわけでも、契約違反があったわけでもない。ただ、スポンサー企業の業績が悪化し、急遽、店を閉めるよう言われたとのことだった。釈然としないまま、会食後、最終の電車でその店に向かった。店内では企業側の担当者や行きつけのファン、飲食店関係者らが渋面を作っていた。 荷造りには数時間を費やした。店の味を支え続けた鉄鍋やミルクパンや秤を抱えて店を出たとき、時計の針は明け方の4時を回っていた。虚脱感を覚えながら各々無言でタクシーに乗り、慣れ親しんだ店を後にした。 個人店が消えてゆく。 「先月まであった店が、今月行ったら
42日間の休業を余儀なくされた旅館が、4月末、客室稼働率96%という驚異的な数字で再スタートを切った。まだ新幹線が近くの白石蔵王駅まで開通していないのに、である。 宮城県白石市の鎌先温泉にある「時音の宿 湯主一條」。全国の旅館が自粛に苦しむ中、ゴールデンウィークもほぼ満室となった。なぜ、この旅館はそんな数字を叩き出しているのか。 実は休業の間に、その秘密があった。 彼らも、もちろん厳しい局面に立たされていた。施設に大きな被害はなかったが、電気の復旧に時間がかかり、ガソリン不足もあった。特に食材の調達が地震後は難しかった。 先代が経営していたとき、経営危機に陥ったことがある。それを今の当主が経営を引き継ぎ、何でもやるサービスから、確実にできるサービスに絞り込み、品質を向上させた。そうして稼働率や客単価を増加に転じさせ、7年間で売上倍増を実現した。 この背景には、個人客の強い支持がある。彼らを
しかし、アメリカでは既に次世代に注目がシフトしている。注目の的は、“女ザッカーバーグ”と呼ばれるジェシカ・マーである。9歳からプログラミングを始め、12歳で会社を立ち上げ、15歳で高校を卒業。18歳で名門カリフォルニア大学バークレー校(コンピューターサイエンス専攻)を卒業した。現在20歳である。 彼女の事業はソーシャルメディアではない。なんともそれが一見地味なビジネスなのだ。ベンチャー創業者たちの財務管理ソリューションビジネスだ。シリコンバレーのベンチャー創業者は、技術にはやたら詳しいが、財務には弱い創業者が多い。技術は素晴らしいものの、財務の健全性が維持できず廃業してしまう小企業が多いのも特徴だ。財務担当者を雇うステージにまでたどり着けない企業も多い。 老練なビジネスモデル それらの企業が口座情報を入力するだけで、経費分析から資金繰りまで分析し、簡素で見やすいグラフにしてくれる。財務の「
(前回から読む) ―― 今はウェブにもいろんな表現形式が出てきて、動画もあれば、音声や動画を携帯できるポッドキャスト、メタバースと呼ばれる仮想空間もあります。こうした新しい技術を企業サイトに活用するうえで、経営者はどういう視点を持っておけばいいのでしょうか。 前回お話しした、経営者に必要な編成感覚の一部になりますが、「内容に最も適した形式で伝える」ことができているかどうか、その確認に尽きますね。 現場の方が「この部分は文字と画像で説明して、この部分は動画で見せて……」と表現形式をいちばんうまい具合に組み合わせる。文字を使うべきところは文字を使って、画像が適しているところは画像で、動画で見せるべき物は動画で見せる。それをきちんと説明できるか、いち消費者として説明通りに機能している、と感じられるか。 そう言ってしまえば当たり前に聞こえますが、例えばウェブでの映像配信も大きく分けると、オンデマン
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